学生の頃からそうだった。
普通と呼べるほどまともじゃなくて、ギャルになるほど思い切る性格じゃなくて、優秀でもない私はオタクという枠に逃げた。
社会人になれば、なにかが変わるって漠然と信じていた。
でも始まったのは、残業、セクハラ、パワハラ…毒にまみれた会社で毒を口に放り込まれては吐き出すを繰り返す毎日。
希望通り、私は変わった。
もう私はオタクですらない。
最近のアニメは知らないし、ゲームもしていない。
アニメのサブスクは加入しているし、そこそこのスペックのゲーミングPCも持っている。
でも、何もしない。
物を買えば買うほど見えてくる、自分の本性。
ならもういっそ、オタクらしく盛大に逆張りしてやろうかな。
普通の女性みたいに化粧をして、ギャルみたいに思い切って、優秀には…なれないか。
薄着で夜の街に出て、コンビニの前で意味もなく立つ。
そうすれば、きっと誰かが声をかけてくる。
ヤリ目でいい…憂さを晴らしたいのは私も一緒だ。
「こ、こんばんは…!」
…近所の人だ。
目が合うと逃げる人。
挨拶を交わしたことは数回しかない。
(ぼさぼさの髪に不潔そうな服装…)
流石に…この人は違うかも…。
……いや、傾くなら…とことんまでやってみようかな。
「い、いくらまで出せますか?」
開口一番で噛んでしまった。
恥ずかしい、慣れていないのが丸わかりだ。
「ご、五万…!」
声が大きい。
でも提示された額は破格…な気がする。
「いいですよ…行きましょう。ホテル代もお願いしますね」
「あ、あっちにいい…ほ、ホテル…あ…から」
声が小さい。
(疲れる話し方をする人だな…)
彼の二歩後ろを俯いたままついて行く。
会話は無い。
(私、なにしてるんだろ…)
夜風のせいで頭が冷えてしまった。
きっと今日の仕事がいつもより忙しかったせいで、こんなことをしてしまった。
(今からでも断ろうかな…彼、暴れたりしないかな…?)
声をかけようと顔を上げて気付く。
私が住んでいるマンションの前にいた。
「あ、あの…じゃあ…ここで……」
彼は言い残して、そそくさと離れていく。
私がストレスでおかしくなっていたのを見透かしていた…?
それを見かねて、助けに来てくれた…?
彼に興味がわいた。

「あの…少し、話しませんか?」
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