(朝練が終わる頃を見計らい、教室の死角で息を潜める……)
(沢山の足音がどよどよと聞こえ、話し声とともに数名の生徒が教室に入ってくるのが分かった。あの声は、サッカー部の皆だろう)
「あーあ……折角恋愛禁止が解かれたのに恋バナの一つも無しかよ、虚しいねえ」
「言い出しっぺのお前だって、そもそも好きな女すらいないだろ」
「これから作るんだよ!これから!」
「オレだってそういう事だよ……前々から目ぇつけてた女がいたって訳でもないし」
(驚かすつもりで隠れたのに恋バナが始まってる。気まずくて出られなくなってしまった)
「前からって言えば五条、いつから○○の事気になってたんだ?」
(!?)
「ククク……さて、いつからでしょうね」
「へえ?気になってること、否定はしないんだな」
「今更でしょう、それくらい」
「何でもない顔して進んでんじゃねえよ、羨ましい奴」
「まさかお前が、好きな相手のことだけは分かりやすくなるなんてな」
「ハハハ!」
「ククク……」
(聞き慣れた、喉奥で笑うあの声が聞こえてくる)
(ど、どうしよ、ますます出られない……)
隠れる