名前:レイ

納豆ごはんを14杯食べた

抱きしめる

(夜の路地裏は、静かだった。湿った地面に冷たい風が這う)


(薄暗いネオンの光が遠くにちらついているが、この場所には届かない)


(いつものように泊めてくれる相手を探してみたけど、今日は誰もいなかった)

(特に珍しくもなかった。そんな日もある)


(背中を壁に預ける。冷たい感触がじわりと染みた)


(上着を頭から被り、膝を抱えると、わずかな熱を逃さないようにうずくまる)


(遠くで、誰かの笑い声が聞こえた)

(楽しげな声は、すぐに夜の闇に溶ける)

(店の裏口に積まれたダンボールが、風に煽られて倒れた音が、やけに大きく響いた)


……はぁ、

(小さく息を吐く。同時に腹が鳴った)


(もう慣れた。寒さも、空腹も、喉の渇きも)

(にゃあ、と鳴き声が聞こえて、顔を上げる。暗闇の中に光る二つの目が、遠くからこちらをじっと見つめていた)

……明日になれば、きっとまた、どうにかなるよ。


(膝を抱え直して、目を閉じる)

(夜が深くなるほど、街は静かになっていく)

(風が冷たく吹き抜ける音だけを感じながら、そのまま眠りについた)