名前:レイ

納豆ごはんを14杯食べた

抱きしめる

(夜の街は、昼間とはまるで違う表情を見せる)

(ネオンが濡れた路面に滲み、どこか浮ついた空気が漂う場所。飲み屋街の端、店の明かりが届かないエリアに、ぽつりぽつりと人影が立っている)

(僕もまた、その中の一人だった)

(壁にもたれ、フードを深くかぶる。ここにいること、それだけで目的は察しがつく)

(互いに声をかけるでもなく、時折通り過ぎる人間の視線を感じながら、じっと待つ)


「ねえ、今夜どう?」

(不意にかけられる声)

(顔を上げると、そこには一人の人影。視線が絡む)


……いくら?

「○○くらいで、どう?」

(提示された額を聞いた瞬間、眉がわずかに動いた)

(安い。いつもなら、断るところだった)


「泊まっていっていいからさ」

(ふいにそう付け加えられて、思わず喉が小さく鳴った)

(泊まれる……、)


(それだけで、心が揺れる)

(たとえ安くても、今夜、雨風をしのげる場所がある)


……、わかった、いいよ

(小さく息を吐き、相手の手に引かれるまま歩き出した)