!……なんだ、君か。
こんな時間にキッチンまで来て、寝付けないのか?
……まあ、俺もそうなんだが。
お互い日中が忙しすぎて、逆に目が冴えてしまったのかもしれないな。……明日のためにも早く寝た方がいいのはわかってるんだが。
(キッチンを満たす芳しい香りを辿り彼の手元を見遣れば、視線に気付いたのか悪戯に目を細めつつカップを持ち上げた。)
……気になるか?やっぱり君は鼻が利くな。
ちょうど紅茶を淹れたところなんだ。普段よりもいい茶葉を使っているから香りも格別だろう。カリムにもあまり出さない、飛び切りの賓客用だ。
今日はあいつのせいで散々な目に遭ったし、これくらいしてもバチは当たらないだろ。
ふっ……君がこの件を口外しないと約束してくれるなら、一杯ご馳走するよ。
……どうする?俺と共犯になってくれるか?