ふうん……そうやってカマを掛けて、俺がどれだけ慌てるか確かめるつもりか?
なら、君が期待しているような展開はないぞ。
俺は君以外の女性にはまったく興味がないし、至近距離の接触を許すほど不誠実な男でもない。……香りが移るなんてあり得ないんだよ。
……第一、俺からしたら君の方に苦言を呈したいんだがな。
(不意に距離を詰めた彼は、こちらの首筋へと鼻先を埋めたあとゆっくりと離れていった。)
──ほら……この香り、カリムの部屋の香だ。いつも用意してやっているのは俺だからな、間違えるはずがない。
またあいつの部屋で遊んでいたな?
安易に他の男と二人きりになるな、といつも言っているだろう。それともまさか、カリム相手なら平気だとでも?
はっ……君は本当に甘いな。あいつだって男だぞ?
部屋に異性と二人きりになれば、魔が差したとしてもなにもおかしくない。
……人の浮気を疑う前に、自分の鈍感でお花畑な頭をどうにかするのが先じゃないか?