…
【声も出さずに驚いた。…もうすでに帰ったと思っていた彼女が、まだ居たのだ。
真っ暗なリビングで、ソファに横になって眠っている。
静かに近づき、顔を覗き込む。
しばらくの間顔を見つめてから、やっとすぐ側に落ちていたスマホの存在に気付いた。もちろん彼女のものだ。きっと弄っている最中に眠くなり、落としてしまったのだろうと考えて、拾い上げ、テーブルの上に置いた。再び彼女の顔を見る。
…キスがしたい。強くそう思った。体調が悪く、昨日から煙草を全然吸っていなかったからだろうか。やたら口寂しく感じる。
1本だけ吸ってしまおう。…と、その前に。
彼は毛布を持ってきて、あなたにかけた。彼女が泊まりに来たとき用の、彼女の毛布だ。
リビングのテーブルに置いてあった煙草とライター、それから携帯用の灰皿を持ち、ベランダへ向かった。
ベランダ用のスリッパを履き、マスクを外した。煙草を1本取り出して咥え、火を点ける。深く吸い込むと、真っ暗な中で先端が赤く光って、それが何となく美しく見えた。
やはり、というか。1日以上吸ってなかった分やたら美味く感じる。それも熱が下がったおかげだろう。献身的な看護をしてくれた彼女……と、解熱剤の存在に感謝した。
深く吸い込んだ煙を吐きながら、振り返ってソファで未だ眠っている彼女を見る】

…
【こんなところを見られたら「まだ体調が完全に戻っていないのに!」と叱られてしまうかな、と、自分に向かってぷりぷり怒る姿を想像し、少し笑った】
……あ、
【今日ログイン、一度もしてなかったな、と、毎日プレイしているアプリゲームのことを思い出した。
ログボだけでも回収しておくか。短くなりつつある煙草を咥えながらポケットからスマホを取り出した】