…ん…、

…
【ぱち、と目を開けた彼が、しばらく瞬きを繰り返した後、枕元のスマホに手を伸ばした。画面を見ると、どうやら寝入ってから結構時間が経っているらしい。窓の外も暗くなっている。
体を起こす。薬が効いて、熱が下がったのだろう。眠る前と比べると、だいぶ体が楽になっていた。ベッドサイドの小さなテーブルに置いてあった水をがぶ飲みして、雑に腕で口元を拭ってから立ち上がる。
…向こうの部屋から物音ひとつしない。俺の看病が終わり、きっともう帰ってしまったのだろう。そう考えたら、一瞬、胸がずしりと重くなった。
自分は寂しいのか。昼間、あれだけ熱心に看病してもらったのに。…普段、風邪をひいている時の切なさにひとりで耐えるなんて、いつものことなのに。
人間って生き物は強欲なのだとつくづく思いながら、寝室から出て、トイレへ行こうとリビングを通ろうとした】
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