(……財布が、落ちている)
【朝、出勤前に寄ったコンビニで買い物前にATMでお金を下ろそうとすると、緑と紫の星が一面に並んでいるド派手なデザインの小さな財布が床に落ちていることに気付いた。この財布の持ち主は物凄いセンスの人だな…と思いながら拾い上げる。なんか、小学校で選ばされるエプロンとか彫刻刀セットにもこういうデザインのものがあったような。
とにかくコンビニの店員さんに預けておこう、と考えた瞬間、背後から「あの、すんません。財布の落とし物って無いスか?」と聞こえた。
見ると、緑と紫の……丁度この財布と同じ色合いの長髪の青年がレジの店員さんに尋ねている最中だった。】

おれの髪色と同じ、緑と紫の星がいっぱい並んだ小さい財布なんですけど
店員「いやー、ちょっと知らないですね」
……そっスか。あざっす
【怠そうな若い男性店員に素っ気なく言われ、心なしかシュンとしながらレジから離れる。
店から出て行く直前、出入り口付近のATM前で彼を見ているあなたの存在に気付いた。
ばちっ、と目が合う。
あ……、】

……その財布
【180cmを超えているであろう長身が近づいてくる。どっどっどっ、と急に激しく脈打ち始めるあなたの心臓。口の中がカラカラに乾いて、彼に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で「ぁ、」と呟いた。】
それ、おれのなんです
【1mも無いくらいの距離まで近づき、あなたを見下ろす。真っ黒な瞳に捕えられて、その場から動けなくなる。自分が瞬きを忘れたようにじっと彼と見つめ合う。】
貴女が拾ってくれたんですね
【「ありがとうございます」と抑揚のない声で言いながらあなたの手から財布を取り、中を見る。】
謝礼っていくら渡しゃあいいんだっけ……1割?2割?ハァ…今金欠なのになあのー、すんません。おれ今カネなくて、悪いけど50円でいいスか?
・「
…………か、」