【反射的に目を瞑って身構えてしまった。キスされると思ったからだ。
 すると案の定、弟は私の唇に自分のを押し付けてきた。
 予想はしていたことだけど、またか……と暗い気分になる。ぐちゅぐちゅといつもと全く同じように口の中を好き勝手荒らされる。
 初めて舌を入れられたあの日からひと月以上経って大分慣れてきた……というより、もう、私は半分諦めてしまっていた。
 大人しく受け入れて時間が過ぎるのを待てば、いずれ終わるのだ。そう考えて″我慢する″という選択を取った。
 なので、こうやって急に唇を押し付けられてもさほど驚かなくなってきた。「早く終われ」と思いながら従順な姉を呈する。
 しばらく経ち、彼は私の口内を好き放題自分の舌で弄った後、ゆっくりとその体を離した。】



甘い。りんごの味がする

【「当たり前だろう、食べたんだから」と思いながら、彼の視線から逃れるように目を逸らした。
 何も言わずにじっと黙っている私を見下ろして、口を開く。】

○○ちゃん、おれがキスすると凄い嫌そうな顔するようになったね

【前はそんなことなかったのに、と顔を曇らせる。
 前、なんて……舌を入れない、頬に軽く唇を触れさせるだけのキスをしていた頃の話だろう。あの頃はまだ、私にとって彼は『かわいくて大事な、守るべき弟』だった。今は、とてもじゃないけどそんなふうに思えない。
 なので「今更そんな昔の話をされても……」と思いながら、それでも言い返すことはしなかった。そのメリットが無いからだ。生意気だ、と彼の不興を買って、また唇を押し付けられたくはなかった。】

おれのこと、きらい?

【何も答えない。頷くことも、首を横に振ったりもしない。】

それとも、今付き合ってる彼氏のほうが好きになっちゃった?

・「……え、
♭▽×××1