【その日の夜、私は自分の部屋で勉強していた。テスト期間中というわけではなかったけど、習慣にしていた授業の予習と復習。それをやっていた。
時間は確か……22時半だったか23時頃だったか、はっきりとは覚えてないけど、そのくらいの時間だったと思う。教科書や参考書を開いてノートにペンを走らせていると、部屋の外から「○○ちゃん」と声が聞こえた。聞き慣れた恐ろしいその声に身体がビクッと跳ねる。
……今夜も、やってきた。】
「○○ちゃん、開けて。おれ今両手塞がってるの」
【手が塞がってる……?
不思議に思いながらも無視することは出来なかったので(部屋の電気が付いていて、私がまだ起きていることも知っているだろうし)椅子から立って部屋のドアまで向かう。
扉を開けると、弟がいた。ありがとう、と部屋に入ってくる。】

あ、やっぱり勉強中だった?ごめんね、邪魔して
【「○○ちゃんとりんご、食べたくてさ」と持っていたトレイをミニテーブルに置いた。
トレイの上にはお皿と、その上にりんごが1つ。それと果物ナイフが置かれていた。
「剥いてくれる?」そう弟が言う。断る理由も無いので大人しく従った。】
うさぎがいいな いつものやつ
【いつもの、うさぎりんご。彼とりんごを食べるときの定番だった。この形で剥くと、昔から喜んで食べてくれた。
りんごを剥きながら「食べたらすぐ帰ってくれるだろうか」と考える。……帰ってくれると、いいのだけど。】
【剥き終えると、流星が「食べさせてあげる」と、りんごを口元に差し出してきた。
普段は「食べさせてよ」と逆に強請ってくるのに、珍しい。そう思いながら口元に差し出されたりんごをひとくち齧ると甘酸っぱい果汁が口の中いっぱいに広がった。】

おいしい?
【素直に「うん」と頷く。すると急に顔を近づけてきた。】
・「
っ……」