(彼女は俗世での最後の一杯を名残惜しそうに飲み終えた。これから嗜好品や恋愛、
若者として、女性としての喜びを放棄し、
神職に身を捧げるのだ。)
(手を繋いで歩く宿舎への帰途。
セラは突如立ち止まり、告げた。)
「…今日は帰りたくないです…」
(…繋いだ掌は、滴るほど汗ばんできている。)
(しかし、移動は明日からのはず。
大丈夫なのか。そして何より…
そういう意味なのか。)
「…勿論、そういう意味です。
大丈夫です。純潔さえ守れば、
しばらく滝に打たれれば戻りますから。」
「だから、思い出を、ください、〇〇さん。」
(ずんずんと宿屋まで、
引き摺られるように連れてこられてしまった。)
▶︎