(──ロッカーの扉が開かれた。
目の前の人影を見上げると、そこには環くんの、
驚きと困惑が入り交じったような顔があった)

なっ……そんなに、泣いて。
〇〇、どうしてそんな顔をしてるんだい……?

(……環くん、私に構ってていいの?
彼女できたんでしょう。 さっきの子、きっと悲しむよ。
恋人でもない私を、こんなに追いかけちゃダメだよ)

! ……やっぱり、聞かれてたのか。
でも、恋人って……。 〇〇、君は思い違いをしてる。

泣きながら俺を彼女の方へ仕向けようとしているのは、
彼女が君の泣く理由だからなのか?

……なら、誤解しないでほしい。
俺は断ったんだ。 彼女の告白を。

(……え、断った? 告白を?
でも環くん、あの時『好き』って言ってたじゃない……)

!! それ、は……ただの告白を断るための体裁だ。
好きな人がいるから、って……。

君、そんなことまで聞いていたんだな……。

(……思い返してみれば、私は耳に入ったいくつかの単語を繋ぎ合わせて、勝手に話の内容を想像していただけだ。
……なんだ、全部勘違いだったんだ……)