(彼から逃れようと、どれだけの距離を走っただろう。
校舎を上から下へと何階分も駆け下りたが、環くんは
諦めることなく私の後を追いかけてくる。
なんで、こういう時ばかり1人にしてくれないんだろう。
彼の視界から消えれば、これ以上追ってこられないはず。
私は階段から離れて目についた空き教室に飛び込み、
ロッカーの中に身を隠す。
狭い空間に縮こまると、顔がベタベタと涙で濡れているのに気づいた。 ……こんな顔、益々彼に見せられない。
呼吸を殺し、彼にこの場所が見つからないように祈る。
……廊下の方から足音が聞こえる。 きっと環くんだ。
ここを通り過ぎてほしい──その願いも虚しく、教室内に足音が響いた。
教室の戸が閉じられ、カチャリと鍵のかかる音がする。
ああ。 環くんはもう、私の居場所を確信しているんだ。
足音はどんどん近づき、そしてロッカーの前で静止した)
……逃げ道はふさいだ。
もう逃げられない、諦めてくれ。
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