……寝てる、のか……?

あの、〇〇……?

(環くんに声をかけられたが、寝たふりを決め込む。
そのまま彼の気配に神経を研ぎ澄ませて様子を伺うと、
顔を覗き込もうとしているのか、気配は徐々にこちらへ
近づいてきていた)

(そろそろ止まるかな?と思う距離まで彼の気配が迫り、
そして止まることなくそれは近付いてきた。
少しでも顔を動かせば事故が起きてしまいそうなほどの
位置から、呼吸の音が聞こえる……)

……したら、起きる、かな……

(彼は吐息のように小さな声でなにかを呟いた。
……したら? 何をしたら、と言ったんだろう……。
呟きに気をとられていると、不意に背中に質量を感じ、
同時に彼が離れていく気配がした)


(しばらくして起き上がると、背中を覆っていたのは
私のものより大きいブレザーだったことに気がつく)



あ……体は冷えてない? 〇〇。

(少し離れた席に、シャツ姿の環くんが腰掛けているのを発見する。どこかへ行ったのかと思いきや、私が起きる
までそばに控えていてくれたみたいだ……)