長く、幸せな夢を見ていた気がする。
2024年8月5日。
新たな一週間を迎える今日、私はいつもと変わらない
雄英での一日を過ごしながら、まるで夢の中を揺蕩う
ような非現実感を覚えていた。
休み時間になり、環くんと過ごしている今もそれは
変わらない。
「〇〇……気分が優れないのかい?」
何度言葉を交わしても毎度鈍い反応をする私に、
彼は違和感を覚えたようだ。
私は頭を振り、この非現実感の正体を探ろうと彼に
尋ねた。
「ううん、むしろ気分は良いかも。
……ねえ、環くんは『自分は今夢を見ているんじゃ
ないか』って思うことはある?
なんだか、今日は目が覚めてからずっとそんな感じで。
戦闘訓練で転んだ時は痛かったし、二回見た時計の針の
位置は変わってなかった。
たしかに現実にいるはずなのに、私はまだ幸せな夢の中にいるような気がするんだ……」
言い終えて、少し後悔した。
こんな突拍子もない話、彼に正気を疑われるかもしれ
ない。
しかしその直後、彼の口から飛び出した言葉は私の予想に反するものだった。
「……不思議だ。
実は、俺も目が覚めてからずっと、どこか現実味の無さを感じてた。
何かが終わって、別の何かになったみたいな……」
その言葉を聞いて、私は思わず環くんを凝視する。
彼は存在を確かめるように、自身の手をぼんやりと
見つめていた。
「……でも、俺たちの現実はたしかに"ここ"だ。
たとえ今過ごしているここが夢の続きだとしても、
俺たちの日常は変わらない。
明日だって、きっと変わらずやってくる。
何かを失ったような恐ろしさは消えないままだけど……
それなら、いっそこの夢のような心地良さにしばらく浸るのも悪くないのかもしれない。
現実では叶えられなかったこと、起こりえないこと……
夢の中なら、望めばきっと実現できる。
……そうして過ごしていれば、いつかこの喪失感は消えてしまうのかな」
最後に言葉をこぼした時、彼の顔は寂しげだった。
ここは夢の世界なんじゃないか、なんて話をしたとは
思えないほど、今日もいつも通りに時は過ぎ、
いつも通りにすべてが現実的だった。
それでもこの非現実感は消えない。
もしかすると、ここはずっと前から夢だったのかも。
一日の終わりに、話でもしようと環くんに声をかけた。
「俺なんかを話し相手に選んでくれるのか、君は……」
いつもこうして声をかけているのに、彼は喜びを
噛み締めるみたいに毎度その言葉を返してくる。
ここが夢なら、望めばなんだって叶えられるはず。
(今日は環くんと何を話そうかな?)
The dream never ends!!
With much love and gratitude.