僕はおねーさんから深刻な相談をされた。

最近、自宅の老いた犬が
誰もいない玄関に向かってけたたましく吠えるというのだ。

僕がおねーさんの家に遊びに行った時も、
僕を見ても全く吠えなかった人なつっこいあの犬が
突然ものすごい剣幕で吠えるのだという、しかも時間を問わず。

不安がるおねーさんが霊を引き寄せやすい体質だったことを思い出し、僕は
寺生まれで霊感の強いH先輩に相談する事をすすめた

ファミレスで3人で食事をしながら事の話をするとH先輩は

「大丈夫です、その犬は
帰ってきた先祖に挨拶してるんですよ、まあこの時期だしな」とのこと

すっかり安心したおねーさんを送り返すと、H先輩から連絡が・・・

「〇〇先輩の言っていた事だが、確認したい事がある。
〇〇先輩の家の前まで案内しろ。」

深夜2時、おねーさんの家の前に行くと
確かに駐車場に繋がれた犬が吠えている。

「やっぱりな・・・」

そう呟いてH先輩はおねーさんの家の向かいにある電柱に手を添えた
するとそこからスッと青白い光が走り
幾つもの亡者がおねーさんの家を通り抜けようとしているのが見える
しかし犬の抵抗に遭い、上手く通り抜けられない模様

「大した犬だな・・・ずっと家を守っていたのか。」

そういいながら犬の頭を撫でるH先輩

「破っ」

H先輩の声と共に道は家を避け天に伸び、
虹のように遠くの空に伸びていった・・・

「何故おねーさんに嘘をついたんですか?」の問いに
「俺より年上の初対面だった先輩とはいえ、
一目惚れした女を無駄に恐がらせるのはいい男の仕事じゃないからな・・・」

寺生まれはスゴイ、僕は久しぶりにそう思った。

名前:藤堂 千秋
季節が巡って50日目

ピンクのバラをあげる

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