(ふぅーっとタダシが息を吹き、火を消す)

「わーいおめでとー♪」

「あはは。ここまで用意してのお祝いってなかったよね? なんだか照れるな……」

「……悪魔は知ってると思うけど、ろうそくを吹き消すのは悪魔祓いなんだよ」

「え、そうなの?」

「まぁ…………、海外文化ごっちゃ混ぜの日本人に言うのも野暮すぎるんだけど……」

「そうだね。別に魔除けの意味で吹き消してるわけじゃないし。特に関係ないけど」

「日本ではあまり馴染みがないようですが、誕生日ケーキのろうそくは、願いを込めて吹き消すのが一般的だそうですよ」

「そうなんだ!? タダシはんは何かお願いしたの?」

「いや別に? ただこういうパーティするのが初めてだな~って、そっちの方に気を取られてた」

「それに…………」

「ほんと、次の誕生日までには前髪、メガネ、種族、イメージカラー、どれか一つでも確定しないとって言ってたのに……」

「無理だから! それらもう何も入手できないから!」

「まぁ色くらいは~……とは思うけど、着替えももうできないようなもんだしね……」

「ま、しょーがないねっ」

「うう……」

「さ、そんな愛様がいなかった時代の話は後でしましょう」

「せめてケーキを切り分けてから……だな」
(頭がケーキを切り分けていく)

「わぁ……♪」

「上の部分は丸ごとタダシ様に差し上げますね」

「わあ、これは豪華だな……! ありがとう!」

「僕はおっきくね!」

「私はイチゴなし!」

「別にいいじゃないイチゴありで。いらなければ俺にあーんでちょうだい」

「あ、いいねー♪」

「………………」
(そんなことを話している間に、頭はどんどんケーキを切っていく)

「……はい、どうぞあなた様」
ありがとう