「…………」


「…………？」


「鏡が……というか、みんなで出かける夢をみたんだ……」


「？　ああ」


「そこで……、鏡にめちゃくちゃかっこいいこと言われたんだけど……」


「何を言っていたか思い出せない……」


「…………」


「夢だろ？」


「夢なんだけどぉ！　なんか、めっちゃ感動するくらいかっこいいこと言われた記憶はあるのよ！」


「何て言ってたー？」


「知るわけないだろ」


「悪魔でしょ？」


「確かに悪魔だし、夢魔の能力はあるがな。夢魔は別に人間に夢をみさせる悪魔ではないんだぞ」


「……そもそも、夢魔が人間の夢に現れるのは、“そういうこと”目的の時だけなんだよね」


「何？　みんなで青姦でもしてたってわけ？」


「また夢魔の話してる……」


「そこはふてくされるとこなの？」


「そ、そんなやらしー夢じゃないよ。私の肉親とも一緒に図書館に出かける夢だったよ」


「晴れてて、広場みたいなとこでは屋台とか出てて、なんかアイスクリームフェス的なことやってて……？」


「で……？」


「で？　って言われても知るわけないっての……」


「実際にどういう状況だったの？　それがわかれば、鏡くんに言われた言葉も、本人から聞けるんじゃない？」


「それは私も思うんだけど……、……覚えてない……」


「なら忘れろ」


「えーん、なんか名残惜しいよう」


「…………最近不思議な夢みてるね？」


「俺の子孕む夢でもみてくれればいいのに」


「それ夢じゃないんじゃない！？」


「まぁ、本当にみたら、夢じゃないかもねぇ」


「…………」


「私には夢魔がない……」


「別になくてもいいと思うけど……。インキュバスってもともと下級悪魔ではあるんだし」