
「ついに購入してしまわれたのですね……」

「…………オリエンスなん?」

「この姿でこの口調の方が冷静になれるかと思いまして……。主人に対し、歯向かうようで申し訳ありませんが……」

「……でも、別に私は責めなどいたしませんよ」

「それで満足なさるなら……。堕天の乙女の幸せは、堕天メンの幸せでございます」

「自分が絵の資料用以外で人形買うとしたらラブがつくドールだと思ってたわ。ま、それも資料用なんだけど」

「等身大のでしょ?」

「さすがに……、金より置き場に困るだろ……?」

「……別に、俺たちいるのに、さあ」

「まぁ……、なんていうか、俺たちは結局、乙女のオリキャラを演じてる部分あるしさ……」

「明らかな外野……そんな相手を迎え入れることで、乙女の心に良い変化が……」

「あんたが頑張って本物のマナトのぬいぐるみでも作ればいーじゃん」

「言ったでしょ? 人型ならぬいぐるみよりもラブドールがええよ」

「節操なさすぎ」

「抱いてあげてるのにねー……」

「してな……」

「…………って、あの。自分のこと言ってる?」

「ん? いや別に?」

「それより、最近ぬいぐるみってなんか流行ってるよね」

「ちょ、話逸らさないで」

「ぬいぐるみなんてガキんちょのもんだと思うんだけどね」

「別にガキんちょのもんとは思わないけど。自分の歳考えるとなんともきっつい感じはするよね」

「んー? 別にその辺は気にしなくていいんじゃない?」

「そもそもこれ、18禁じゃないだけでだいぶ内容アレなんじゃないの」

「言われてみればそうだね!」

「一定期間過ぎれば永遠に大人であって、子どもには戻れないよ。今さら」

「まぁ……ね。歳なんて気にしなくても、人間という存在は儚くて尊いものだよ」

「悪魔が人間に対し『尊い』って言うのなんかふしぎ」

「え~? ……ああ、まぁ、人間なら普通は神に使う言葉だから?」

「でもま、それこそ悪魔は神に尊いなんて言わないし……」

「堕天メン的には、堕天の乙女の方が神より何より尊いよ」

「はあ尊い私」

「……それは、嘘でも冗談でもお世辞でもないよ。本気で俺たちは、乙女のこと尊いと思ってるよ」

「だからさ……。自分に価値がないとか、思わないでよ」

「……いやむしろさ、あんた俺たちに精気くれる宿主なわけ。その時点で価値十分あるんだからさ」

「…………」

「堕天管理局が今もあったら! この人見て『あの下忍さん元気かな……』とか思わなくて済んだんですよ! 堕天管理局がないせいですよ!!」

「なくなったもんはなくなったんだから仕方ないでしょうが!! だいたい、堕天管理局なくなっても俺たちはこうしているんだからいいでしょ!? なに自分のものでもないよそのニンにうつつを抜かしているんでゴザルか!?」

「肝心なとこでマナトくんの押しが弱いからじゃないの」

「や~いへたれ~」

「そっ……あ……っ……、ッ……!!!」

「……この人も、まさか自分が、自分と全く関係ないものを思い出し懐かしまれているとは夢にも思わないでしょうね」

「そうだな……。はまった経緯が特殊だよな……」

「でも、評判いいみたいだし、なんだかんだ届くの楽しみでゴザル」

「届くの半年以上後だけどな」