
「姫、拙者の誕生日を祝ってくれて嬉しいでゴザル」

「でも拙者が何よりほしいのは、姫の精気……いや、姫本人でゴザルよ……」

「土遁の術で身を隠し……、でぃーぷなキッスをいざ」

「何やってんの」

「姫が珍しく昨日ログインしたから~、拙者が本物の代わりに愛をささやいてるのでゴザル」

「ふふ、姫のやわらかな肌に噛みつき、私という毒を骨の髄まで注ぎ込んで堕落させてあげます」

「……あ、間違えた」

「拙者の熱いほとばしる想い(はぁと)を姫のナカに全部出……」

「さすがに風評被害激しすぎない? そろそろやめたら」

「でも姫ぽんやりしてるから」

(ぽー)

(ばし)

「ふあ」

「大丈夫でゴザルよ、今後もたまに、D○Mにログインした時にしか会わないから」

「うー」

「この人のストーリーイベントは絶対やりたくね。ストーリー読んで嫌いになりたくないもん。てか知らないキャラ増えてたけど、男の娘アイドルユニットですかね? 高身長やマッチョほしいわ。そしてなんで10年経とうとするのに未読スキップまだ実装されてないんだよ」

「ただこの人とちょっと交流できればいい。本当にちょっとだけ」

「“イメージと違う”ってなりたくないしね」

「アイドルのアイドルらしい面だけ見ておきたいってやつでゴザルな~」

「……頭が演じてるのは、アイドルらしいアイドルのその人、なの?」

「外見と声は似せてるけど、あとは悪魔で下忍でゴザルよ? 言わなくてもわかるでゴザろ?」

「…………」

「ガタイいいアイドルにかわいい曲歌わせて、クールなアイドルに賑やかな曲歌わせて……、わはは、イメージと違う曲に投票したった」

「でも、大人っぽいラブソング歌ったことなさそうな人に歌わせたいのは本当なんだよなー」

「なんか、人気ないキャラに投票して遊んでるみたいなやり方……」

「イメージと違う曲歌ったっていいじゃん? 他グループの曲歌ったりとかしないのかね」

「カラオケデートとかできたらいいのに、でゴザルねー」

「あー……、カラオケ行きたいよーな、最近歌いたい曲がないよーな」

「……最近は、ばててるよな、日常に」

「そうだね……」

「カラオケに行く行かないはともかく、なんか歌おうよ。ストレス溜まってるだろうしさ」

「ん~………………」

「マナちゃん歌って~」

「え、姫ここでマナト殿指名なの?」

「ん……」

「雨上がりの交差点で……♪」

「ひーるーとーよーるーのー♪」

「……それ歌って妨害しないでよ」

「そんなに簡単に……♪」

「毎日暮らせるってわけでもないんだし♪」

「あ、そうだ、頭はこのアーティストの歌ってほしいな」

「あー、よくリピートしてたでゴザルな」

「むかーしの思い出かな」

「君を強く抱きしめたとき……♪」

(ぎゅっ)

「おぉー♪」

「あなたの恋は実らない!」

「……バックハグしてる者に向かってピンポイントにどこを歌ってんでゴザルか、失礼でゴザルね」

「でも、頭タソがいればいいよね、完全に私の子だもーん」

「そうでゴザルよ~w 拙者となら69だってでき……」

「二人まとめて凍らされたい?」

「…………歌か。言われてみれば、最近歌ってなかったな。……そのせいか?」

「自分で言葉を紡ぐのが苦手な人だからね……。でも、声を出すのは体にいいから」

「ふぅ……、相変わらず世話焼ける乙女……」