
『魔王候補の素質を持って生まれた悪魔――、堕天メン。一口に堕天メンといっても、その形態は非常に様々』

『一般的に――、人間の女性からして魅力的な姿を持つ異性、すなわち美形の男性の姿を持つ悪魔が多い』

『……だが、本来堕天メンという存在は、自分が魅入られた女性……対象の好みの外見になることに抵抗を持たない』

『それに伴い……、異形頭となる悪魔……はまだしも。女性の姿を持ったり、人間、あろうことか天使や神と称される堕天メンも存在する』

『……人間界では、ニワトリが先かタマゴが先か……なんて言葉があるだろう? この問題もそれに帰結する』

『堕天メンにいる神や天使という存在は、本当に悪魔にとって敵にも等しいあの存在であるのか? あるいは、堕天の乙女によって作り変えられた存在なのか……?』

『……答えなんて、少なくとも正式に次期魔王の時代がやってくるまではわかりそうもないが、な』

『…………長く、理解しがたい話をしてしまってすまないね』

『とりあえず……、私は、堕天メンを研究している。……堕天管理局がなくなり、まっさらな妖魔の堕天メンに出逢う人間が0に等しくなってからも、ひっそりと、ね』

『堕天管理局の解散により、人間界にあった堕天メン向けのショップも軒並み閉店。また、堕天の乙女たちは調合道具など全て取り上げられ、堕天メン向けのグロスを作ることもできなくなった』

『……一応、魔界にはグロスもあるけれど。まぁ希少だし、人間界で材料集めて堕天の乙女に必要数作ってもらうことと比べるとなかなか大変だ』

『私が、愛くんのためのグロスを作ってあげよう……。といっても、実際にグロスを作り、堕天メンと堕天の乙女に使わせるのは初めてでね。……上手く作れるかはわからないのだが』

『魔界……特に、堕天管理局の管轄外の場所にも、いわゆる曜日探索地というものがあってね。特定の曜日に、特定の場所への道が開かれる不思議な場所だ』

『なかなか危険な場所ではあるのだが。……そこに愛くんを派遣させ、収穫したもので私がグロスを作り、愛くんに持たせる。……あなたくんは、それをその日のうちに受け取ってほしい。そうしないと、グロスが消滅してしまうからな。厄介なものだが』

『愛くんが、なかなか成長しないらしいじゃないか。……私なら、効果の高いグロスを作れる。悪い話ではないと思うのだが……、どうかな?』
(……正直、何の話なのかさっぱりわからない)
(ただ、愛がこの人――ドクターを紹介してきたのは、このドクターに何かを期待しているということなのだろう)

『まぁ、その辺の判断はあなたくんが自由にしてくれて構わない……。その未熟な状態の愛くんもかわいいと思うなら、そのまま愛でてあげるのもまた一興……』

『お近づきの印……というのもなんだが。ζに私渾身のグロスを持たせておいた。ぜひ使ってみてくれたまえ』
誰……?