小鳥遊ホシノはアビドス高等学校の屋上にいた。
今頃後輩たちはエデン条約の生中継を見ているだろう。
条約というより、カタリの姿が映らないかの方に興味があるのだろうけど。
ホシノはエデン条約自体に興味はない。
締結されてもアビドスには何の関係もないから。
もしカタリが映ったとしても、後で録画を見せてもらえばいい。
そう思いながら昼寝をしようとマットに寝転ぶ。
空は青い。
クジラのような雲が空に浮かんでいる。
今日も平和だ。
「───ホシノ先輩ッ!!!」
空を眺めていたら、慌てた様子でセリカが走ってきた。
「どうしたのセリカちゃん。カタリちゃん映った~?」
「ち、違くてっ、大変な事になってるのよ!!早く来て!!」
明らかに様子がおかしい。
顔が真っ青だ。
嫌な予感を感じつつ、ホシノはセリカと共に対策委員会の会議室へ向かう。
「あ、ホシノ先輩!」
「セリカちゃんが慌ててたけど、何があったの~?」
全員の顔が暗い。
アヤネが慌ててタブレットを見せてきた。
「……なに、これ」
そこに映っていたのは、廃墟。
煙や灰が舞い上がる、まるで戦場のような光景だった。
「何があったの?」
「わかりません、襲撃があったとしか……」
「急に爆発が起きた。……ミサイルかも」
生中継の画面では、慌ただしく生徒が走り回っているのが見える。
負傷者も多く凄惨な状況だ。
「……カタリちゃんは!?」
「わかりません……」
「中継にも映ってない。電話もしてみたけど、出なかった」
ホシノは自分のスマホを確認する。
モモトークに通知はなく、着信履歴も無かった。
試しにカタリへ電話をかけてみるが、繋がらない。
「……助けに行こう」
シロコが銃を持つ。
それをアヤネが止めた。
「落ち着いてくださいシロコ先輩!今から行っても……」
「そうだよシロコちゃん。この状況で私達が行っても、余計に混乱させて被害を増やすだけ」
ホシノは冷静だった。
カタリの事は心配だが、今出来る事は何もないとわかっている。
「か、カタリ先輩無事だよね……?」
「はい、きっと大丈夫です」
セリカが不安そうに呟く。
ノノミがそれを慰めていた。
「……今は、無事を祈るだけですね」
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