「テストを受けに……?」
何を言ってるんだ、というのが最初の感想。
ゲヘナでトリニティの試験をする筈が無いのに。
「うう、信じられないですよね……」
ただ彼女が嘘を言っているようにも見えない。
嘘をつくならもっとマシな嘘をつくだろう。
「……ちなみにテストを受けにきたトリニティ生は何人いるの?」
「えっと、4人です」
……報告で複数あがっていたトリニティ生の目撃証言を考えれば、嘘はなさそうだ。
「えっと……通してもらえませんか……?」
私は判断に悩んでいた。
私個人としては何か事情があると思うから通してあげたいのだが。
普通に考えれば拘束すべきだろう。
「……これ、あげる」
「これは……?」
「この辺りの地図。バレたら困るし後で処分しといて」
私はテストを受けに来たという証言を信じる事にした。
いや……というよりは、この娘達を『通さないといけない』気がしたからだ。
理由はわからない。
勘と言われても何か違う、この奇妙な感覚。
まるで、未来を識っているかのような。
「あ、ありがとうございます!」
モモフレンズ好きの娘が頭を下げる。
その後ろに隠れるように立っていた正義実現委員会の女の子も、軽く会釈した。
「早く行った方がいいよ。美食研究会がこっちに来たらその分、警備が厳しくなる」
「あ、あはは……お言葉に甘えさせて頂きます」
苦笑いを浮かべ、モモフレンズ好きの娘は走り出す。
正義実現委員会の娘もすぐ後ろについていった。
「……しかし、テストねぇ」
トリニティは何を考えてるのだろう。
テストが何かの隠語だったとしたら、私がやった事は大問題だ。
しかしエデン条約前だし、やばい事はやらかさないと信じたい。
"あれ、カタリ"
トリニティの娘達を見送ったすぐ後に、よく知った人から声がかけられた。
シャーレの先生だ。
「先生。こんな時間まで仕事ですか?」
"うん、トリニティの娘達の引率をしてて……"
「あー……ここ通りましたよ」
先生がいるなら悪い事にはならなそうだ。
私は安心した。
この先の道案内を軽くし、私は先生を見送る。
先生が去っていくのを見送った後、私は巡回に戻る事にした。
その後温泉開発部がもう一度爆破を起こし、私も結局現場に行く事になったが、まあその辺りはいつものゲヘナの日常である。
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