前回美食研究会が問題を起こした事を鑑みて、今日は外出禁止令が出された。
まあこれに素直に従う子達ではないので、問題はもちろん発生する。
今は温泉開発部が市街地の真ん中を爆破して大騒ぎになっていた。
更に美食研究会が牢屋を抜け出し、風紀委員会に対して攻撃を仕掛けてきたと報告があった。
そこまではいつも通りだったのだが、問題は。
「……トリニティの生徒がいる?」
報告を聞いた私は思わず聞き返した。
なんでこんな時期、時間にトリニティ生がゲヘナに?
『複数目撃発言が挙がってますので、事実の可能性が高いです』
「……そっかぁ、わかった」
一番に考えられるのは報復の可能性。
美食研究会がやった事に対しての反撃だ。
しかしトリニティのトップはエデン条約推進派だったはずだし、このタイミングでわざわざ問題を起こすだろうか。
条約前にやり返しておかないと舐められると思ったのかもしれないが。
「……うーん、陽動かもしれないし私はこのまま巡回の方がよさそうかな。付近の委員集めていいから、ヒナが来るまで頑張って」
『了解です!』
通信を切り、私は巡回を再開する。
私が行った所で美食研究会相手じゃ役に立たない。
ならば他で異常が無いかパトロールした方がいいだろう。
「しかしなんでトリニティが……」
前回のゴールドマグロの時に美食研究会とトリニティが手を組んだ?
いや、ハルナはそういう暗躍をするタイプではない。
義理堅い所はあるし、何かしらトリニティに恩があったら手伝うかもしれないが。
「……うーん、わからない」
何より気になるのが、美食研究会が暴れているという報告ばかり来る事。
本当にトリニティが報復に来たならもっとトリニティの娘達に関する報告が上がる筈だ。
だがトリニティの報告はほんの少しの目撃証言だけ。
それによる被害も今のところ特にないときた。
「……あー、駄目だ。私じゃ考えるだけ無駄」
何の意図があるのかが読めない。
ヒナやアコみたいに頭が良ければ何かしら気付けたのかもしれないが。
「考えるのはやめよ」
巡回に集中する。
もしも陽動だったとすれば、少しの違和感も見逃せない。
ここまで来てエデン条約が反故にされるのは勘弁だ。
「……ん、誰か来る……?」
角の先から足音が聞こえる。
慌てたような足音。
銃を構えた瞬間に、人影が飛び出してきた。
「ひゃあっ!?」
悲鳴をあげたのは、トリニティの制服を着た女の子。
身につけているバッグは確かモモフレンズのペロロという鳥を模したものだ。
「うう、すみません通して貰ってもいいでしょうか!」
「……一応事情を聞かせて」
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