エデン条約に向けての準備を日々進めている中。
美食研究会がトリニティの敷地内に入って銃撃戦を起こしたという知らせが入って来た。
「カタリは待機してて。私と救急医学部で行くから」
大事にしたくないという事で、救急医学部が行くという体になった。
一応ヒナが付き添いに行く形だ。
あまり大人数で行くと政治的な問題もあるので、私は留守番。
留守番中にパンちゃんが暴走するなど色々あったが、いつも通りなので気にしない。
ヒナからそろそろ戻るとモモトークが来たので、ゲヘナ学園の入り口まで向かう。
少し待っていると救急医学部の車が戻ってきた。
学園の前で車は通り、ヒナ達が下りてくる。
「おかえり」
「ただいま」
「ふふっ、お出迎えありがとうございますカタリさん」
車から降りて来たハルナは微笑む。いつもと変わらない様子に、思わずため息が出てしまった。
「ハルナ……ゲヘナ内ならまだしもトリニティで問題起こすのはやめてよ」
「ふふっ、ゴールドマグロと聞いて黙っている訳にはいきませんわ」
「うーん、黙ってて欲しかったなぁ」
定期的に問題を起こすハルナの事は苦手ではあるが、こういうブレない部分は尊敬する。
私にここまで強い意志はない。
「ねぇハルナ。なんでそこまで美食研究会の活動に対して熱心なの?」
私の質問に対して、ハルナは驚いたような顔をした。
答えがすぐに返ってくると思っていたから、少し間が空いた事が意外だ。
「……カタリさん。貴女は自分が夢中になれる物と出会った事はありますか?」
「え?」
ハルナから投げかけられた真剣な問に、私は戸惑う。
自分が心の底から夢中になれた物などあっただろうか。
あるとすれば───
「カタリちゃーん!」
───今はもう居ない先輩が、頭をよぎった。
「っ……!」
私は頭を振る。
先輩の事を思い出すと、どうしても最期の姿も思い出してしまう。
あれから二年も経ったのに。
「……申し訳ありませんわ、聞いてはいけない事を聞いてしまいました」
「謝らなくていいよ。ハルナに悪気が無いのは知ってる」
私の様子を察知して頭を下げてくれるハルナ。
この辺りはちゃんとしてるから嫌いになれない。
「私が今夢中になれているのが美食。美食に関わる事であれば何でも全力でやれるのです」
好きな物の為であれば手間を惜しまないという感じだろうか。
確かに私もアビドスにいた頃は何でも楽しんでこなしていた気がする。
「……うん、わかった。ありがとうハルナ」
「ふふふっ、カタリさんのお力になれたのであれば嬉しいですわ」
ハルナは微笑んだ。
これだけ見るとお嬢様だ。
食が関わると色々問題を起こす事が多いだけで。
→