なんとかアリウス分校を退け、ゲヘナとトリニティが滅びるかもしれない未来は避ける事が出来た。
これも全てシャーレの先生の手腕があったからだ。
『まるで先生の指揮みたいでした!』
私は風紀委員会の娘に言われた事を思い出していた。
皆の話によると、記憶が無い時の私の指揮は先生のように的確だったらしい。
『クックック……まさか、アビドスに器がいたとは。この地域は神秘に事欠きませんね』
そして、黒服に昔言われた言葉。
もしかしたら、あいつは何か知っているのかもしれない。
私は奴から貰った名刺を取り出す。
捨てようと思ったが、ずっと残していたもの。
「……あいつは、何か知ってるのかな」
一回だけ私に声をかけてきたあいつ。
奴が言っていた『器』というのが、この前起きた現象の事だったら。
私が意識を失っていた間に『誰か』が私の身体を使っていたとしたら。
「……なんとか、しないと」
シャーレの先生に相談しようかとも思ったけど、出来ない。
もしも、もしもの話だけど。
その『誰か』がシャーレの先生だったら?
有り得ない話ではない。
あの人はキヴォトスの外から来た人。
私の知らない何か特殊な技術を持っているのかもしれない。
「私は、どうしたら」
でも、先生と私は何度も関わった。
あの人は悪人ではない。
シャーレの先生に、相談するべきだろう。
それでも、万が一という可能性もある。
悩んだ結果。
私はスマホを取り出した。
電話をかける。
少しだけコール音が続いた後、それは電話に出た。
『——————クックック、そろそろ電話を頂ける頃だと思いましたよ』
VOL2『鐘が鳴った日』〜fin〜
鐘が鳴った日13