タブレットの情報のおかげでミメシスとの戦いは避け続け、負傷者達の避難誘導はスムーズに進んだ。
ゲヘナの風紀委員会の娘達は殆ど避難出来ただろう。
しかしまだ、救助しないといけない娘がいる。
「あれは……」
一緒にいた風紀委員会の娘がそれを見付けた。
トリニティの正義実現委員会の負傷者だ。
「"大丈夫?"」
「カタリ先輩、トリニティの救助なんて……!」
「"負傷者に学校も何も関係ないよ"」
『カタリ』はバッグから応急処置セットを取り出す。
バッグに常備していたのが役に立った。
正義実現委員会の娘に、軽く応急処置を施した。
「"これで血は大丈夫だと思う"」
「あ……ありがとうございます」
正義実現委員会の娘は頭を下げた。
ゆっくりと立ち上がる。
「"この付近にまだ負傷者はいる?"」
「恐らく、向こうの方にまだ残っているかと……」
タブレットの情報と照らし合わせる。
彼女が指差した方角は確かに警備がいたポイントだ。
「"私達が救助に行く。君は避難して"」
「いえ……軽傷ですし手伝わせてください」
まさかの申し出だった。
トリニティの娘がいた方が話はしやすいから助かるが。
「ゲヘナの風紀委員会に借りを作ったままでは、正義実現委員会の評判に関わりますから」
「"……わかった。一緒に行こう"」
こうしてトリニティの娘も迎え、ミメシス達に遭遇しないよう徹底しながら救助活動は進んでいった。
戦力はヒナやツルギ達の方面に集中していたのか、順調に救助活動を進める事が出来た。
非常事態だからか、正義実現委員会の娘が一緒に来てくれたおかげか、トリニティの娘達も素直に救助に応じてくれる。
大聖堂から離脱した後は、トリニティの娘達と別れる事になった。
「……その、名前を伺ってもいいですか?」
「"私は……土御門カタリだよ"」
「……土御門カタリさん。本当に助かりました。これは嘘偽りなく上司にも報告させて頂きます」
正義実現委員会の娘が頭を下げる。
その後、負傷者達を連れて撤退していった。
「……カタリ先輩は聖人すぎますよ。トリニティまで助けるなんて……」
ずっと一緒に行動していた風紀委員会の娘が呆れたように呟いた。
見捨てるなんて出来る訳が無い。
それに、『土御門カタリはトリニティも助けた』だろう。
『カタリ』は助けに応じただけだ。
「"手伝ってくれてありがとね"」
「いえ、カタリ先輩の為ですから」
これだけ信頼してくれる後輩がいるとは、カタリは恵まれている。
今は『カタリ』なのが申し訳ないと思ってしまう。
『……そろそろ時間です』
「"……ごめん、体力の限界みたい"」
「先輩?」
タブレットのアプリが落ちる。
それと同時に、『カタリ』もその場に倒れた。
「カタリ先輩!?急いで運ぶぞ!」
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