その後もう一人のシロコちゃんと共に私は皆と歓談を楽しんだ。
ある程度時間も経ってきたころに、私はプレゼントを渡す事にした。
「ホシノ」
「なぁに~?」
「誕生日プレゼント、受け取ってくれる?」
「えっ、用意してくれたの?嬉しいな」
私はバッグから今日の為に買っておいた物を取り出した。
それをホシノに渡す。
「期待に応えられるかわからないけど……これ」
「これ、ボールペン?わぁ、鯨の柄のやつだ~」
そう、私が選んだのは可愛い鯨がプリントされたボールペンのセットだ。
ホシノが鯨好きだからこそ選んだ。
ボールペンにしたのも理由がある。
「嬉しいよカタリちゃん、ありがとう」
ホシノは笑顔でお礼を言う。
ユメ先輩は自分の手帳は次の生徒会長が受け継ぐようにしたいと言っていた。
いつかユメ先輩の手帳を見つけた時、ホシノが受け継いだら。
そのボールペンで書いてほしいという願いを込めている。
……ホシノには言わないけどね。
「そういえばカタリちゃんはさ」
「ん、何?」
「誕生日いつなの?私も祝いたいな」
あ……まずい、まだ決めてない。
「そうよ。カタリ先輩の誕生日も祝いたいし教えて」
「ん、私も気になる」
「そういえば聞いてませんでしたね」
皆の視線が私に集中する。
どうしよう、秘密って訳にはいかないよね。
答えないのも不自然だし……嘘でもいいから答えなきゃ。
いや、私に誕生日ないから何日って答えても嘘になるんだけど……あ、嘘だ!
「……実はね、4月1日なんだ」
エイプリルフール。
午前までは嘘をついていい日。
経歴が捏造されている私にピッタリな日だろう。
「へぇ~、エイプリルフールなんだ」
「覚えやすいですね~、カタリさんの誕生日もパーティーしましょうね!」
「4月の初めって忙しいだろうし無理しなくてもいいよ?」
「駄目ですよ!カタリさんの誕生日も祝います!」
良い友人を持てて幸せだ。
ふとヒナに視線を向けると、ヒナは微笑んでいた。
「カタリの誕生日パーティーなら、ゲヘナも協力するわ」
「ナギサ様もカタリさんの事は気に入ってますし、きっとトリニティも協力する筈です!」
「そ、そこまで大規模になっちゃうの?」
もしアビドス、ゲヘナ、トリニティの三校合同なんて事になったら実質エデン条約だ。
たかが一生徒の誕生日パーティーにそんな事は起こらないと思うけど。
シャーレの先生じゃあるまいし。
「カタリちゃんの事だから全校合同になったりしてね~」
「あはは、そんなまっさかぁ」
笑い声が教室を包む。
その後、日が沈むまで皆で雑談を楽しんだ。
『生まれた日というもの』~完~
生まれた日というもの4