ヒナに言われて初めて気付いた。
そういえば、私の誕生日はいつだろう。
「……まだ決まってないです」
「そう……ごめんなさい」
「いやいや、謝らないでよ。私はそういう存在だし」
私はいわゆる普通の人生を送ってきた訳ではない。
突然生まれたスワンプマンだから。
私の過去もその周りの人たちの記憶も作られたものだ。
「雷が落ちた日にしようかなって思ったんだけど、いつ生まれたのかわからないんだよね」
私が世界に紛れ込んだタイミングはわからない。
だから誕生日がいつになるのか明確な基準がなかった。
「こういうのってサイコロとかで決めちゃっていいのかなぁ」
「……カタリがそれでいいなら私は止めないけど、もっと考えた方がいいと思うわ」
ダイスの女神様に全てを委ねるのもアリかな、と思ったけどヒナは呆れているようだった。
個人的にはいい案だったんだけど……
「そう言われてもなぁ……」
「誕生日は一年に一度の特別な日なのよ。納得いく日にしなさい」
他の人と違って誕生日を自分で決める事が出来るチャンスではある。
ヒナの言う事にも一理あるし、しばらく悩む事にしよう。
「わかったよ、考えてみる」
「それがいいわ。決まったら教えてちょうだい」
「もし決まったらヒナは私の誕生日を祝ってくれる?」
「ええ。当然でしょう」
当たり前のように言うヒナに、ドキッとした。
ヒナに祝われるなんて嬉しすぎる。
「……何を戸惑っているの。貴女だって小鳥遊ホシノの誕生日を祝ってるじゃない」
「それはまぁ、お世話になってるし」
「私も貴女には助けられてるのよ。いつもありがとう」
「えっ、あっ、こちらこそ!」
ヒナに面と向かってお礼を言われるのはなんか照れる。
いつも一緒にいるけど、そんなに力になれてるとは思わなかった。
私は戦闘面ではヒナは勿論、鎮圧すべき問題児達にも遠く及ばないから。
「貴女の誕生日を祝いたいって人は多い。美食研究会も、万魔殿も……私達風紀委員会も」
「あはは。もし皆集まったらすっごい大規模になっちゃうね」
もし私の知り合いが皆誕生日を祝ってくれたとしたら、万魔殿がやってたパーティーみたいな規模になってしまう。
そんな事はないだろうけどね。
風紀委員会の子達は祝ってくれると信じたいけど。
「……だから、ちゃんと考えて決めなさい」
「わかった。しばらく考えてみるね」
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