カタリのミスは、一人で抱え込んだ事。
結果的に言えば、誰かに相談するべきだった。
土御門カタリは一人では何も出来ない存在なのだから。
彼女は何も選択出来ず、ただ恐怖に苛まれていた。
もしも彼女が事実を隠して戻る事を選択出来たのなら。
少し様子がおかしい事を心配されるだけで、日常に戻れたかもしれない。
もしも彼女が事実を包み隠さず話していれば。
戸惑いや混乱があったかもしれないが、ヒナやホシノとの関係は続けられただろう。
もしも彼女が自分のヘイローを壊す事を選択していれば。
……この夢のような世界は崩れ、彼女の望み通り元の青春の物語に戻っただろう。
だが、彼女はどれも選択出来なかった。
事実を隠してもいつかバレる事が怖くて。
事実を伝えて皆に嫌われることが怖くて。
自分のヘイローを壊すのも怖くて。
結局、何も出来ないのだ。
───恐怖は限界に達していた。
カタリは自分の腕が一瞬泥のように見えるほど錯乱しており、正気とは程遠い状態になっていた。
スマホの着信は鳴りやまない。
全て彼女の事を心配している電話だが、錯乱してる彼女にはそうは思えなかった。
スマホを投げ捨てる。
彼女はもう、存在を保てなくなっていた。
───彼女の神秘は恐怖に反転する。
顔を隠し、翼を生やし、銃を捨てた彼女のヘイローは変質していた。
彼女が歩く度に地面は泥と化していく。
「……すべてを……」
もうカタリの意識は残っていないのだろう。
彼女を動かすのは与えられた使命。
「……私と、同一に……」
泥がカタリのドローンを飲み込んだ。
少し経つと、泥からカタリのドローンが浮かび上がる。
姿形は一緒だが、何処か違うような存在となっていた。
「……私は……」
彼女は歩き続ける。
無意識か、向かう方角にゲヘナの学園は存在していた。
もしもカタリの意識が残っていれば、彼女は何を望むのだろうか。
今は何もわからない。

to be continued.