名前:小鳥遊 ホシノ

連邦生徒会を43回襲撃したくなった

いいねぇ~


走り疲れた私は公園のベンチに座っていた。
息を整える為、ゆっくりと深呼吸する。

「飲む?」

目の前にスポーツドリンクが差し出された。
手を出した人に視線をやる。

「……カヨコ、何でここに?」

「走ってるカタリを見かけたから。奢るよ」

「ありがとう……」

スポーツドリンクを受け取り、飲む。
冷たい液体が身体に染み渡る。

「どうしたの、思い詰めてたみたいだけど」

「それは……」

私は言い淀む。
こんな事を相談してしまっていいのだろうか。
いや、言えない。
私は作られた存在で、過去の記憶は捏造されたものかもしれないなんて。

「……言いにくいなら、無理に話さなくていいけどさ」

カヨコは私の隣に腰かけた。
私は少し横にずれる。

「カタリが困ってるならいつでも力になるよ」

優しい言葉だった。
きっとそれはカヨコの本心だろう。
カヨコは優しい子だから。
でもそれは、私と仲が良くした過去の記憶があるからで。

「……カヨコ、一つだけ聞いてもいい?」

「いいよ、何?」

「私と初めて出会った時の事、覚えてる?」

私の問いに、カヨコは一瞬だけ目を見開いた。
カヨコと初めて会った時の記憶は、私自身も無い。
気付いたら仲良くなっていた。

「……昔の事だし、詳しくは覚えてないかな。軽い挨拶した程度だったと思うけど」

すぐに平静を装って答えたが、恐らく嘘だ。
カヨコの記憶にもないのだろう。
だけど気を遣ってくれているんだ。
私が何かに気が付いていると察しているから。

『……カタリ、友達多いよね。不思議と皆に愛されているというかさ』

前にカヨコに言われた言葉を思い出す。
きっとカヨコは前から私の存在に疑問を持っていたんだ。
それでも触れずにいてくれていた。

「……そうだったね、ありがと」

私は立ち上がる。
こんな優しいカヨコに甘えられない。
私に関する記憶は、作られたものだから。

「カタリ、様子がおかしいよ。普段なら相談してる」

「……ごめん」

「謝らないでもいいけど、何を抱えてるのか聞きたいかな」

カヨコが差し伸べようとした手を、私は避けた。

「ごめん」

顔が見れない。
私はそのまま逃げるように走り去った。

「カタリ!」

カヨコの呼ぶ声が聞こえるが、私は止まらない。
もし私が今抱えている事実を相談したら、カヨコに嫌われてしまうかもしれない。
私という存在はスワンプマンで、カヨコとの友情は偽りだったのだから。

夢を描いた魔法7