「美食研究会、なんでここに?」
「ふふっ、そんな事はどうでもいいではありませんか」
ヒナが急いでゲヘナ郊外へ向かっている情報。
カタリを慌てて探す風紀委員。
その様子からカタリに何かあったのは予想出来た。
電話を使わずに人海戦術で探していたからだ。
恐らくカタリはゲヘナ郊外にいる可能性が高いということも、ヒナの様子から推測出来た。
「ハルナに頼まれたから運転したけど、カタリは?」
ハルナはフウカに自分の推測を話し、車を使わせてもらいたい事を伝えた。
フウカもカタリが心配だからここまで来てくれたのだ。
「……あれが、カタリだよ」
沼の中心に佇むカタリテラー。
彼女の足は止まらない。
「あれがカタリ……何があったの」
「誰もわからないよ。呼びかけにも応じてくれない」
「ふむ……周りの沼はなんでしょうか」
「詳しくはわからないけど、飲み込まれたら戻れないと思った方がいい」
「結構範囲広いわね……」
「とにかく、説得と足止めを手伝って。カタリを元に戻す」
カヨコはそれだけ告げて、場所を移動した。
ハルカとムツキに状況を説明に行ったのだろう。
残された美食研究会とフウカは少しの間沈黙する。
「……カタリを元に戻せるのかな」
「やる前から諦める訳にいかないでしょ!私はやるわよ!」
「ええ、ジュンコさんの言う通りです」
「じゃあ私は足止め担当に回りますね〜」
美食研究会は軽く話し合った後、ハルナ以外は走っていった。
唯一残ったハルナはフウカの方へ振り向く。
「フウカさん、私がカタリさんを説得します。お手伝いして頂けますか?」
「それは勿論構わないけど、私は何をすればいいの?」
「私を車に載せて沼のギリギリまで接近して下さい」
「そこから呼び掛けるって事?」
「……カタリさんは呼び掛けに応えないという話をしていました。ですから私は別の方法を使います」
「別の方法……?」
「沼に入ってカタリさんと直接触れる距離まで接近するのです」
その言葉にフウカは驚きを隠せなかった。
先程カヨコが言っていた通り、カタリテラーの周りにある沼は危険だ。
どんどん瓦礫などが飲み込まれ、カタリテラーの武器にされている。
仮に生物があそこへ足を踏み入れれば、恐らく帰ってこれないだろう。
「ハルナ、死ぬ気なの?」
「いいえ、美食の研究はまだ終わってません。死ぬつもりはありませんよ」
「カタリに触れたとして、戻ってくれるのかしら」
「私はカタリさんを信じています。カタリさんならば、目の前にいる方を見捨てたりはしません」
カタリが元に戻る根拠は無いに等しかった。
沼の詳しい性質はわからないが、失敗すればハルナの命も危ない。
それでもハルナはいつも通りの笑みを浮かべた。
「それに、カタリさんと食べる食事は美味しいですから。大切な美食が失われるのは耐えられませんわ」
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