「今だよ、起爆!」
「はいっ!」
「おっけ〜」
カヨコの合図で、カタリテラーの進行方向に仕掛けられた爆弾を爆破させる。
道を塞ぐように瓦礫を作った。
しかし、カタリテラーが沼に瓦礫を飲み込んでしまい足止めにならない。
「や、やっぱり直接撃つしかないのでしょうか……」
こちらの戦力はヒナと便利屋。
大抵の戦力ならば制圧可能だろう。
「……別の方法を考えよう」
しかしカヨコはその選択を選ばない。
気絶させたら起きるまで説得が出来ないというのもある。
一番の理由は、時間をあまりかけたくなかった。
被害が増えるというのもあるが、長時間違う存在になったカタリが元の存在に戻れる確率が低くなる気がしたからだ。
時間をかければかける程、カタリは今の姿に馴染んでしまうだろう。
「……カヨコ!」
カタリテラーは沼に飲み込んだ瓦礫を、カヨコ目掛けて射出した。
咄嗟に横跳びで物陰に隠れ回避する。
「あんな使い方も出来るんだね……」
自走しない物であっても攻撃に使えるようだ。
仮にこのままもっと多くの物を飲み込めば、と考えると厄介な力である。
「カタリ!攻撃をやめなさい!」
アルが叫ぶもカタリテラーは反応を示さない。
更に射出されそうな瓦礫を、アルとヒナの二人がかりで撃ち砕く。
「カタリ、お願いだから戻って」
呼び掛けに一切応えない。
どうしてこんな事になってしまったのか、ヒナにはわからなかった。
『先生みたい』と言われていたのを気にしていたのは知っているが、何が起きてしまったのか。
「……反応するまで、呼び続けてやるわ!」
アルは諦めない。
彼女が目指すアウトローは、仲間を見捨てるような存在ではないから。
カタリテラーの攻撃をかわしながら、名前を呼び続ける。
「……まずいね」
状況に進展がない。
変わらずカタリテラーは進み続けているし、呼び掛けには無反応のまま。
このまま続けても、こっちが疲弊するだけだ。
疲弊すればいつかは沼に捕まる。
決断は早めにしないといけない。
最悪の結果を回避するために。
「…………?」
思考するカヨコの耳に、車の駆動音が聞こえた。
カタリテラーの近くには車はなかった筈。
音が聞こえた方角に視線をやると、1台の車が向かって来るのが見えた。
黄色い車に5人程乗っている。
「あれは……」
ゲヘナの問題児集団の一つ。
美食研究会と、いつものように給食部の部長が一緒にいた。
いつもと違うのは、フウカが縛られていないという事。
「お待たせしましたわ、私達も手伝います」
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