「さっすがアルちゃん!で、どうやって?」
「ふふっ、こういう時はね。呼びかけるのが一番よ!」
「…………」
便利屋の会議をヒナは黙ってみていた。
そんな彼女にアルは声をかける。
「ヒナ!まさかヘイローを壊すつもりだったとか言わないわよね!」
「……それは」
「例え確率が低かろうが、友人を助けるのは当たり前でしょう!」
確かにヒナはヘイローを壊す事も考えていた。
それが一番確実であり、被害を抑えられるからだ。
風紀委員長として、ゲヘナを守る当然の選択肢。
しかしヒナにとってヘイローを壊すのはあくまで最後の手段。
カタリを助けたいのはヒナも一緒だ。
「ええ。カタリを助けましょう」
「……でも、どうすればいいのでしょうか」
ハルカが不安を漏らす。
少しずつカタリは進んでいる。
あまり時間をかければ、莫大な被害が出る可能性がある。
しかし接近は出来ないという状況。
「……説得の方針で行くなら、足止めしつつ声掛けするしかないね」
「くふふっ、じゃあ足止めはムツキちゃんにお任せ~」
「わ、私も頑張ります!」
「ハルカとムツキは近付かず、爆弾だけで足止めをお願い。社長と風紀委員長は……距離を保ちながら、声をかけよう」
これが現状では最善だろうが、逆にそれ以上の事が出来ない。
何をすればカタリが元に戻るのかわからないから。
出来る限りの努力はするつもりだが、仮にその努力が実らなければ。
最悪の選択肢を選ぶ事もカヨコは頭の隅に置いていた。
「心配する必要はないわ、カヨコ」
「社長……?」
「カタリは戻ってくる。絶対によ!」
自信満々の宣言。
根拠はないのかもしれない。
それでも、信じられる言葉だった。
「行くわよヒナ!」
「ええ、行きましょう」
アルとヒナは出来る限り接近する。
沼には入らないように慎重に。
「カタリ!目を覚ましなさい!」
まずアルが声を掛けた。
しかし彼女は何も反応を示さない。
「カタリ……!こっち!」
注意を向けるためにヒナは威嚇射撃をした。
それでもカタリは反応を示さず、ただ前へ進む。
「もっと近くに寄りたいわね……!」
「駄目よ、沼に飲まれる」
ヒナの翼なら少しだけ空を飛べるが、もし反撃されたら危険だ。
沼に落ちれば助からない。
例えヒナであろうとも。
「呼び掛け続けるしかないわね」
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