「あれは……?」
反転した彼女を最初に見つけたのは空崎ヒナ。
便利屋からの連絡を受け居場所を絞り込み、最短でゲヘナ郊外まで来て、沼を広げながら歩く彼女を見付けた。
「もしかして、カタリ?」
フードも被り顔を隠した彼女にカタリの面影は殆ど残っていないが、周囲を飛んでいる物には見覚えがあった。
カタリが愛用しているドローンだ。
「ヒナ!」
少し遅れて到着したのは便利屋68。
走ってきたのか、少し息が切れている。
「あれはなんなの?」
「恐らく……カタリ」
便利屋は驚きを隠せなかった。
カタリとは思えないような姿をしていたから。
「あ、アル様!」
ハルカが指さす方向を見ると、無人の戦車が沼に飲み込まれる所だった。
戦車が完全に飲み込まれた後、少しして戦車が沼から飛び出してくる。
「……あれ、やばくなーい?」
ムツキが呟くと、無人の戦車が動き出す。
誰も乗っていない筈の戦車は、ヒナ達の元へ向かって動いていた。
「沼に飲み込まれた物を操る力……近付かない方がよさそうだね」
「あれ、生き物も飲み込まれるんでしょうか……?」
「……試す訳にはいかないでしょ。でも飲み込まれると思ってた方がいい」
カヨコは冷静に状況を分析していた。
カタリテラーの周囲3m程は沼になっている。
そこに踏み込むのは危険だ。
「ハルカ、絶対に近付いちゃ駄目よ!」
「わ、わかりましたアル様!」
「まずは戦車を止めるわ!」
アルはスナイパーライフルを即座に構え、キャタピラを撃ち抜く。
ヒナも続いて武器を構え、戦車の装甲を撃ち抜いた。
「でもカタリ本人を制圧しないと、戦力はどんどん増えてくよ」
問題は明確だった。
カタリテラーの能力は移動するだけで戦力を増やす事が出来る。
彼女を止めなければこの戦いは終わらない。
だが、どうやって止めるのか。
「気絶させるのは駄目なの?」
「それじゃ一時凌ぎにしかならないと思う。また目が覚めたら同じ状況になる」
「じゃ、じゃあどうすれば……」
選択肢は二つある。
確実な選択肢と、不確実な選択肢。
「……ヘイローを壊すか、カタリを元に戻す」
カヨコには言わせず、ヒナが先に告げた。
この中では彼女と一番親しいからこそ、残酷な選択肢を挙げるのは自分の役目だと思ったから。
少しの間沈黙が流れる。
「……ふふっ、じゃあ取るべき選択一つじゃない」
沈黙を破ったのはアル。
彼女は不敵に笑っていた。
「カタリを元に戻すわよ。例え困難だったとしても、それ以外の選択なんて有り得ないわ!」
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