名前:小鳥遊 ホシノ

連邦生徒会を43回襲撃したくなった

いいねぇ~


私は自分がどういう存在かを話した。
純粋なキヴォトス人ではなく、たまたま出来たスワンプマンだという事。
生まれたのは最近であり、過去の記憶は全て捏造されたものだという事。
それが受け入れられず、消えてしまいたいと思っていた事も。

ただ、先生の器であるという事は伏せる事にした。
私自身それに関してはもうあまり気にしていないし、先生に余計な疑いがいくのを避けたかった。

「……でも、やっぱり皆と過ごしたいと思って戻ってきました」

「…………」

沈黙が苦しい。
やっぱり許されなかったのだろうか。
そんな事を考えていたら、カヨコに小突かれた。

「……あのさ、私がさっき会った時に言った事覚えてる?」

「えっと……困ってるなら力になるって……」

「聞いてたんだよね。なんで話してくれなかったの」

「ごめん……カヨコ、怒ってる?」

「怒るに決まってるでしょ」

「本当にごめん」

「……はぁ、いいよ。次からは絶対に相談してね」

あの時の私は自暴自棄になっていた。
色んな事実が判明して混乱もしてたし。

「話したら関係が壊れると思って……」

「そ、そんな事、ないです!」

「ハルカ?」

「カタリさんは私と……と、友達になってくれました!わ、私から見捨てるなんて事は有り得ません!」

「……うん、ありがとう」

ハルカは一年生だ。
過去の捏造はほぼ影響ない所ではある。
他の子達の反応が怖い所だが。

「心配させたんだから、今度いっぱい悪戯しちゃおっかな~」

「お、お手柔らかにお願いします」

「くふふっ、ダーメ♡」

ムツキも気にしてる様子はなかった。
心なしか怒ってる気はするが、それはカヨコと同じで相談しなかった事に関してだろう。

「……カタリ。貴女がどういう存在だろうが、関係ないわ」

「アルちゃん」

「貴女は私の友人。過去が捏造された物だとしても、これは変わらないわ!」

「友達のままでいてくれるんだ、やっぱり優しいね」

「私は冷酷なアウトローよ!優しくなんかないんだから!」

アルちゃんは否定しているが、優しすぎる。
付き合いが長い分、私と過ごした日々は作られた物が多いのに。
そんな事気にしてないような様子だ。

「カタリが無事でよかったー」

「本当よ!心配したんだから!」

「イズミもジュンコもありがとね」

「今度カタリさんの奢りで食べにいきましょうか」

「……う、それは……いや、いいよ」

「ふふっ、楽しみにしてますね~☆」

まさか美食研究会まで私を助けに来てくれるとは思ってなかった。
アカリの食事の奢りでいくら吹き飛ぶかわからないが。
……助けてもらったお礼には安いくらいか。

「カタリさん、今度一緒にお食事しましょうか」

「……私でいいの?」

「はい。貴女とする食事は美味しいですから」

私の為に命を懸けて飛び込んできたハルナ。
彼女は美食の為ならなんでもする。

「ありがとハルナ。貴女が来てくれて嬉しかった」

「ふふっ、礼には及びませんわ」

美食研究会も私の話を聞いて態度を変えるような事はしない。
本当に私はいい友人を持った。

「……カタリ。私は貴女がいなくなるのは嫌よ」

「フウカがそう言ってくれて嬉しいよ」

「過去が捏造された物かどうかなんて、重要じゃないもの。私は貴女との過去があるから友達になった訳じゃないんだから」

フウカは呆れたように言う。
過去の捏造は重要じゃない、かぁ。
そんな風にあの時の私は考えられなかった。

「……ヒナは、どうかな」

この中で一番付き合いが長いヒナの顔を伺う。
彼女は眼を閉じて考えているようだった。

「……成程ね。確かに思い返せば貴女との記憶は不自然な所が多々あるわ」

「……捏造された物だからね」

「でも、フウカの言う通り重要な事じゃない」

ヒナは眼を開けた。
その眼は私をしっかり見据えており、いつも通りの優しい眼差しをしていた。

「私はカタリを大事な友達だと思っているわ。これは作られた過去の影響じゃなく、今の貴女を見ての判断」

「……私も、ヒナと友達でいたいと思ってる」

「それならゲヘナに戻ってきなさい。ここにいる人だけでなく、きっと皆受け入れてくれるから」

皆の顔を見る。
誰一人私を拒絶する者はいなかった。

「おかえり、カタリ」

ヒナが手を差し伸べる。
私はその手を握った。

「────ただいま」

夢を描いた魔法後編10