私は自分がどういう存在かを話した。
純粋なキヴォトス人ではなく、たまたま出来たスワンプマンだという事。
生まれたのは最近であり、過去の記憶は全て捏造されたものだという事。
それが受け入れられず、消えてしまいたいと思っていた事も。
ただ、先生の器であるという事は伏せる事にした。
私自身それに関してはもうあまり気にしていないし、先生に余計な疑いがいくのを避けたかった。
「……でも、やっぱり皆と過ごしたいと思って戻ってきました」
「…………」
沈黙が苦しい。
やっぱり許されなかったのだろうか。
そんな事を考えていたら、カヨコに小突かれた。
「……あのさ、私がさっき会った時に言った事覚えてる?」
「えっと……困ってるなら力になるって……」
「聞いてたんだよね。なんで話してくれなかったの」
「ごめん……カヨコ、怒ってる?」
「怒るに決まってるでしょ」
「本当にごめん」
「……はぁ、いいよ。次からは絶対に相談してね」
あの時の私は自暴自棄になっていた。
色んな事実が判明して混乱もしてたし。
「話したら関係が壊れると思って……」
「そ、そんな事、ないです!」
「ハルカ?」
「カタリさんは私と……と、友達になってくれました!わ、私から見捨てるなんて事は有り得ません!」
「……うん、ありがとう」
ハルカは一年生だ。
過去の捏造はほぼ影響ない所ではある。
他の子達の反応が怖い所だが。
「心配させたんだから、今度いっぱい悪戯しちゃおっかな~」
「お、お手柔らかにお願いします」
「くふふっ、ダーメ♡」
ムツキも気にしてる様子はなかった。
心なしか怒ってる気はするが、それはカヨコと同じで相談しなかった事に関してだろう。
「……カタリ。貴女がどういう存在だろうが、関係ないわ」
「アルちゃん」
「貴女は私の友人。過去が捏造された物だとしても、これは変わらないわ!」
「友達のままでいてくれるんだ、やっぱり優しいね」
「私は冷酷なアウトローよ!優しくなんかないんだから!」
アルちゃんは否定しているが、優しすぎる。
付き合いが長い分、私と過ごした日々は作られた物が多いのに。
そんな事気にしてないような様子だ。
「カタリが無事でよかったー」
「本当よ!心配したんだから!」
「イズミもジュンコもありがとね」
「今度カタリさんの奢りで食べにいきましょうか」
「……う、それは……いや、いいよ」
「ふふっ、楽しみにしてますね~☆」
まさか美食研究会まで私を助けに来てくれるとは思ってなかった。
アカリの食事の奢りでいくら吹き飛ぶかわからないが。
……助けてもらったお礼には安いくらいか。
「カタリさん、今度一緒にお食事しましょうか」
「……私でいいの?」
「はい。貴女とする食事は美味しいですから」
私の為に命を懸けて飛び込んできたハルナ。
彼女は美食の為ならなんでもする。
「ありがとハルナ。貴女が来てくれて嬉しかった」
「ふふっ、礼には及びませんわ」
美食研究会も私の話を聞いて態度を変えるような事はしない。
本当に私はいい友人を持った。
「……カタリ。私は貴女がいなくなるのは嫌よ」
「フウカがそう言ってくれて嬉しいよ」
「過去が捏造された物かどうかなんて、重要じゃないもの。私は貴女との過去があるから友達になった訳じゃないんだから」
フウカは呆れたように言う。
過去の捏造は重要じゃない、かぁ。
そんな風にあの時の私は考えられなかった。
「……ヒナは、どうかな」
この中で一番付き合いが長いヒナの顔を伺う。
彼女は眼を閉じて考えているようだった。
「……成程ね。確かに思い返せば貴女との記憶は不自然な所が多々あるわ」
「……捏造された物だからね」
「でも、フウカの言う通り重要な事じゃない」
ヒナは眼を開けた。
その眼は私をしっかり見据えており、いつも通りの優しい眼差しをしていた。
「私はカタリを大事な友達だと思っているわ。これは作られた過去の影響じゃなく、今の貴女を見ての判断」
「……私も、ヒナと友達でいたいと思ってる」
「それならゲヘナに戻ってきなさい。ここにいる人だけでなく、きっと皆受け入れてくれるから」
皆の顔を見る。
誰一人私を拒絶する者はいなかった。
「おかえり、カタリ」
ヒナが手を差し伸べる。
私はその手を握った。
「────ただいま」
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