「土御門カタリの恐怖が顕現しました」
「……あの泥人形か」
「私は彼女についてよく知らないのですが、彼女の神秘は器だったのでは?」
キヴォトスの何処か。
ゲマトリアは机を囲み会議をしていた。
「『器』というのは付加されたものですね。土御門カタリの本質はスワンプマンの方ですから」
「つまり、彼女は神秘を二つ持っていたという事ですね」
「そういうこったぁ!」
「……神秘が二つあるにしては、今のアレからは先生の気配を感じませんが?」
「恐らくですが、片方の神秘が恐怖に反転した影響で消えたのではないかと」
「神秘と恐怖は両立出来ないという解釈でよろしいですか?」
「そう考えられます。このケースは初めてなので想像で話すしかありませんが」
「私にはどうでもいい事です。あの恐怖はキヴォトスの脅威に成り得ないのでしょう?」
「そうですね。恐らくは他の神秘に倒されて終わりでしょう」
「だったら放っておきなさい。もう彼女には価値はないでしょう。……ああ、芸術として見てる方もいるんでしょうか」
「アレの出自は芸術として見る事も出来るが、その能力は芸術とは言い難い。他人の作品を自分が作ったと主張するようなものだ」
「おや、マエストロは彼女に興味はないと?」
「私の芸術に必要そうなのは、あれが出来た過程だけだ。黒服があの泥人形に目をつけていた筈だが」
「クックック。私は役割を果たしていただけですよ」
「彼女に事実を説明するという役割ですか」
「ええ。私個人としては神秘が二つある事に研究の価値はあると考えていますが」
「神秘が反転して恐怖になり、片方の神秘が隠れた状態では研究に値しないと?」
「その通りです。彼女の神秘の神髄は、あらゆる者と関係を築けること」
「……厄介な神秘。私は先生を敵だと認識しておりますが、彼女に関しては敵視が難しい」
「貴女にまで影響があるのですね。彼女の神秘はそれほど強力なものですか」
「過去の改変まで行われたのですから、世界に干渉する程の力があるのは確かかと」
「ですがもう神秘は恐怖に反転した。もう戻らないでしょう」
「ええ。奇跡でも起きない限りはそうです」
「では話はもう終わりです。彼女に関する話は無駄でしょう?」
「そうですね。本日はこれで解散と致しましょう」
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