名前:小鳥遊 ホシノ

連邦生徒会を43回襲撃したくなった

いいねぇ~


先生のおかげでまたミカさんに会う事が出来た。
ミカさんはいつものように笑顔だが、何処かぎこちない。
いつもミカさんが座っていた席に座るよう、私は促す。

「……全然来れなくてごめんね?」

ミカさんは少し困ったように笑う。
急に呼び出して迷惑だったかもしれない。

「事情は、知ってます」

「……そっか。私が何をしたのか、知ってるんだ」

ミカさんは私の言葉に俯いた。
その様子を見るにミカさんはやはり、何か事情があって騒動を起こしたのだろう。
私はその辺りの事情を聞くつもりはない。
それは古書館でしか関わらない私が踏み込んでいいものではないだろう。

「こちらを受け取ってもらっていいですか?」

私は本を一冊手渡した。
それはミカさんの思い出が詰まった御伽噺の本。

「え、これ……」

「私が複製した物です。古書館に中々来れないのであれば、思い出の品が手元にあった方がいいかと思いまして」

「貰って、いいの?」

私は頷いた。
ミカさんの為に作ったものだから、貰ってほしい。

「ミカさんの好きそうな本はまだたくさんありますから、時間があるときには来てほしいですが……」

「……私なんかでもまた本を読みに来ていいの?」

ミカさんは不安そうな顔を見せる。
やはり来る資格がないと思っていたのだろうか。

「御伽噺では悪い事をした魔女は制裁されて終わりですが……改心して救われる物語がたくさんある事を、私は知っています」

ミカさんが善人である事を私はよく知っている。
あの日、話し合えば皆仲良くなれると私の前で語っていた姿は本物だと思うから。

「それに私は……友達のミカさんと交流したいですから」

「ウイちゃん……!」

ミカさんは勢いよく立ち上がり、私に抱き着いてきた。
勢いが強くて思わず倒れそうになる。

「ありがとう、私も本当は来たかったの……!でも、私は裏切っちゃって……!」

「……いいんですよ。目標が達成出来ないなんてよくある事ですから」

ミカさんは私に抱き着いたまま離れない。
こういう時、どうしたらいいかわからず困っていた。
普段は中々嗅がない花のようないい匂いがする。
助けを求めるように先生の方を見たが、グっと親指を立てている。

「ミ、ミカさん……そろそろ離れてもらえると……」

「あ、ごめん。ウイちゃんこういうの苦手だったね」

ミカさんは慌てて離れる。
久し振りの距離感だったからか顔が熱い。
手を繋がれるだけでも緊張したのに、抱きしめられるのは恥ずかしすぎる。

「えへへ、ウイちゃん可愛い」

「か、からかわないでください……」

「ごめんごめん。ねぇ、今日は何をお勧めしてくれるの?」

いつもの笑顔を見せてくれるミカさん。
私はその様子に少し安堵し、ずっとミカさんにお勧めしたかった本を紹介する事にした。


その後、ミカさんはまた定期的に本を読みに来てくれるようになった。
一人の時間は減ってしまったが、それでもいい。
彼女と共に本を読む時間は私にとっても、この子達にとっても幸せな時間なのだから。

「ミカさん、こちらの本を読んでみてください」

「うん、ウイちゃんいつもありがと!」



『古書館の出会い』~完~
古書館の出会い8