私は古書館の前までやってきていた。
……本当はもう来るつもりはなかった。
ウイちゃんに合わせる顔がないから。
だけど先生からモモトークが来た。
一緒に古書館で本を読まないか、って。
……断れる訳がなかった。
"ミカ、待たせたね"
5分程度待っていたら、先生は現れた。
いつものように優し気な笑みを浮かべている。
「……先生、本を読みたいなら大図書館でもいいと思うよ?」
私は決心がつかず、古書館から逃げようとした。
先生は申し訳なさそうに微笑む。
"ごめんね、ここの本が読みたいんだ"
元々は私も同じ理由で古書館に来た。
もしかしたら先生は知ってるのかな?
私が前に古書館に通ってた事を……
"ミカは古書館に入りたくないの?"
「それは……」
入りたくない、といえば嘘になる。
でも今更どんな顔でウイちゃんに会えばいいのか。
ウイちゃんは私の事を応援してくれたのに。
私はその応援を裏切った。
「……ううん。古書館は私も好き」
覚悟を決めよう。
ナギちゃんは正直に話し合おうと騒動を経て学んだ。
だったら私も、逃げずに向き合わないと。
もしそれで嫌われたとしても……逃げ続けるよりはマシだよね。
"良かった。じゃあ行こうか"
先生は古書館の扉を開けて、中に入る。
私は一度深呼吸する。
ウイちゃんには絶対会う事になる。
いつも通り笑顔で会おう。
大丈夫、私はそういうの得意だ。
「……うん、行こう」
笑顔を作り、古書館に踏み込む。
久し振りに来たけど中の風景は変わらない。
いっぱいに並べられた本棚。
そして、机に座る私の大事な友達。
「……ミカさん」
「ウイちゃん、久し振り」
私は笑顔を作りいつも通り挨拶する。
ウイちゃんは椅子から立ち上がった。
"じゃあ私は向こうで本を読んでるから……"
先生はそそくさと去っていく。
やっぱりこれが狙いだったんだ。
「……お待ちしてました、こちらに座ってください」
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