毎日来るわけではなかった。
それでも一週間に一回は顔を見せに来ていた。
だけど、最近は全くそれもない。
前のように一人に戻っただけ。
ただ、寂しいという気持ちは少しあった。
本棚の整理をしようと立ち上がった所で、扉がノックされた。
ミカさんか?
そう思って古書館の扉を開けると、そこには図書委員のシミコが立っていた。
「……どうしました?」
「何を言ってるんですか委員長。今日は蔵書運ぶって連絡してましたよ」
ああ、そうだった。
これを忘れるなど私らしくない。
「……そうでしたね。ではいつも通りで」
「はい、わかりました」
シミコは手際よく本を運んでいく。
私は蔵書リストに目を通しながら、置き場所を指示した。
そんな作業中。
「そういえば委員長、聞きましたか?」
「……何をですか?」
何の話か見当もつかなかった。
どうせ大した話でもないのだろう。
外の出来事に興味はない。
「ティーパーティーの聖園ミカさんが拘束されたって話です」
───思考が、止まった。
言葉の意味を理解したくなくて。
「……な、なんでですか?」
「なんでもティーパーティーの百合園セイアさん襲撃の犯人だったらしくて」
その後、シミコから一連の出来事を聞いた。
百合園セイアが襲撃された事。
犯人はアリウスを率いたミカさんだった事。
シャーレの先生や補習授業部、シスターフッドがミカさんを拘束したという事。
私は何故ミカさんがそんな事をしたのか理解できなかった。
当人は『ゲヘナが嫌い』と言っていたらしいが、嘘だろう。
彼女はゲヘナとも仲良くなれると思うと言っていた。
あの言葉が嘘だとは思えない。
「……委員長、大丈夫ですか?」
「はい……大丈夫です」
「作業は終わりましたので、ゆっくり休んでくださいね。机で寝たりしちゃ駄目ですよ」
シミコはそう言い残し、古書館から出て行った。
私は鍵をきっちり閉め、椅子に腰かける。
「……ミカさん、どうして」
ミカさんに何かが起きたのは確実だった。
あれだけ純粋な彼女が過去に追放されたアリウスと組んで襲撃をするなんて。
彼女の性格ならばアリウスと仲良くしようと思うかもしれないが。
だけど、私には何も出来ない。
私のような図書委員にティーパーティーに関わる力はない。
私はゆっくりと立ち上がり、その子を手に取った。
ミカさんの思い出の子。
私にやれる事は何かあるのか……少し考えてみる事にした。
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