その後、全員の避難誘導は終わった。
私は現場に戻って状況を確認しに行くと、メイドカフェがあったビルは爆破されていた。
たぶんハルカちゃんが勢いでやったのだろう。
そんな事を考えてるとモモトークに通知がきた。
確認すると、カヨコからだ。
現場から少し離れた路地裏に来て欲しいとの事なので、私はすぐに向かう事にした。
「……ああ、待ってたよ」
指定された場所につくとカヨコが待っていた。
後ろにアルちゃんやムツキちゃん、ハルカちゃんもいる。
アルちゃんはこちらを見ると微笑み、ムツキちゃんは笑顔で手を振り、ハルカちゃんは何度もお辞儀している。
「あのメイドカフェの事知ってたの?」
「依頼があったんだよ。ぼったくりのメイドカフェから金を取り戻してほしいって」
やっぱりそうなんだ。
カヨコの様子に違和感はあったけど、納得した。
「お金を取る前に爆発しちゃったけどねっ!」
「す、すみませんすみません!」
やっぱりハルカちゃんが爆破したのか。
私達が避難した後に戦闘の流れでやったのだろう。
「いいのよハルカ。依頼は失敗だけれど依頼人は潰した事を喜んでいたもの」
アルちゃんはフォローするように声をかける。
「アルちゃん、依頼料半分払うって言われたのに断っちゃったんだよね~」
「当然でしょう!お金は取り戻してないんだから、半額でも貰う訳にはいかないわ!」
アルちゃんらしい決断だ。
お金に結構困ってる筈なのに……
「……じゃあメイドカフェに来てくれたのは依頼のためなんだ」
ちょっと残念だった。
カヨコが理由もなくメイドカフェに来るのは不思議だったけど。
「ごめん、色んなイベントに付き合わせちゃって」
「……カタリ、これ」
カヨコが私にある物を差し出してきた。
それはさっきメイドカフェで撮った写真。
私とカヨコでハートマークを作っているものだ。
「サイン、くれるんでしょ?」
「え……?」
「大事な思い出だからさ」
カヨコは照れくさそうにそう言った。
これはスタッフルームにあった筈だけど……
もしかして、わざわざ取りに行ってくれたの?
「……いいよっ!」
私は写真を貰い、メイド服に入れていたペンを取り出す。
そして写真に可愛らしいサインを記入した。
「はいっ、どうぞお嬢様!」
「ありがと……大切にするから」
カヨコはスマホカバーに写真をしまった。
私にとっても大切な思い出になるだろう。
カヨコが私の写真を大切にしてくれるだけでもう嬉しすぎる。
「またメイドカフェでバイトした時は来てね」
「それはちょっと……」
「いいじゃーん、便利屋の皆で行こうよ~♪」
「息抜きにはいいかもしれないわね」
「わ、私なんかも行っていいんです……?」
「勿論だよ!なんならハルカちゃんにもメイド服着せたいなぁ~」
その後は便利屋の皆と談笑を楽しんだ。
色んな騒動があったが、今日の事もいい思い出となるだろう。
こうやって皆ともっと思い出を作っていきたいな。
『一日だけのお嬢様』~fin~
一日だけのお嬢様8