「ご主人様、ジャンケン大会の時間ですよー!」
「「「イエーイ!!」」」
カヨコの食器を下げた後、私はステージの上でマイクを持っていた。
このメイドカフェのイベントの一つ、ジャンケン大会。
利用しているご主人様と代表のメイドでジャンケンして、最後に一人残った人がメイドとツーショットを撮れるというものである。
「今日は入ったばっかですが、私『リータ』がご主人様のお相手をしますねー!」
「「「かわいいー!」」」
「えへへ、ありがとー!」
私は笑顔で手を振りながら、チラッとカヨコの方を見る。
カヨコは呆れながらも参加してくれるようだ。
食事の後にお願いしまくった甲斐があった。
「じゃあいきますよー!じゃんけん、ポン!」
何回かじゃんけんを繰り返した後、最終的に残ったのはカヨコだった。
打合せしてないので、完全な偶然である。
「おめでとうございます、お嬢様!」
「……ありがと」
「ほらほら、こっち寄ってください!」
私はカヨコの肩を抱く。
そして片手でハートマークを作った。
「お嬢様もお願いします♪」
「……はぁ、わかったよ」
カヨコは私の強引さに呆れているのだろう。
でも付き合ってくれるからカヨコは優しい。
カヨコも同じようにハートマークを作って、私の手と合わせてくれる。
「はーい、撮りますねー!」
私と同じくバイトのメイドが写真を撮ってくれた。
カヨコの分は勿論だけど、私も写真もらおうっと。
「えへへ、後で現像してサインも書きますね」
「サインも書くんだ?」
「はい、思い出ですから」
私はカヨコを席までエスコートする。
めちゃくちゃレアな写真が撮れて嬉しい。
「ありがとねカヨコ、付き合ってくれて。嫌じゃなかった?」
「……本当は来るつもりなかったけどね」
「あ、やっぱり」
「でも、カタリのおかげで退屈はしてないよ」
カヨコは微笑んだ。
その笑みは作っているものじゃない。
それだけで安心だ。
「ん……ちょっと電話してくる」
「アルちゃんとか?」
「まぁそんな所」
私はスマホを持ったカヨコを見送り、ホールを軽く見回る事にした。
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