「お待たせしましたお嬢様ー」
私はオムライスを持ってカヨコの席まで戻ってくる。
カヨコはスマホを弄っていたが、私が来て顔を上げた。
「ありがと」
「普段は妖精さんが作るんだけど、カヨコのために手作りしました」
「……カタリが作ったの?」
「うん!」
妖精さんというのは裏方さんの事である。
任せようかとも思ったが、カヨコに手作りを食べさせたかったので材料と場所だけ借りて作らせてもらった。
「じゃあ美味しくなる魔法かけますねー」
「いやそういうのはいいんだけど……」
「駄目ですー、行くよー。美味しくなーれ、萌え萌えキュン♡」
私はオムライスにケチャップでハートマークを描く。
カヨコはやってくれなかったけど、仕方ない。
無理やり連れて来たようなものだし。
「はーい、どうぞお嬢様」
「……いただきます」
カヨコはオムライスを口に運ぶ。
私がニコニコとしながらそれを眺めていると、
「……そんなに見られてると食べにくい」
「あっ、ごめん」
注意された。
カヨコは食事も絵になるなぁと思ってたのに。
「オムライスはどう?」
「美味しいよ」
「えへへ、ありがと」
お世辞だとしても嬉しい。
15分ほどでカヨコは完食し、スプーンを置いた。
「ご馳走様でした」
「はーい、カフェラテをどうぞー♪」
食べ終わるタイミングを見計らってカフェラテを持ってくる。
これも私が淹れたものだ。
「……ん、美味しい」
「えへへ、出来るメイドでしょ。褒めてもいいんだよ」
ドヤ顔で胸を張る。
冗談のつもりだった。
「ありがとねカタリ」
カヨコが自然に私の頭を撫でる。
予想外の出来事に、一瞬フリーズする。
「カ、カヨコが撫でてくれるなんて……」
「……普段カタリの方が距離近いでしょ」
そういえばそうだ。
私よくカヨコに抱き着いてる。
「でもカヨコからしてくれるなんて珍しいんだもん。だいたい私にされるがままだし」
「……今は私がお嬢様なんでしょ。普段と違う事ぐらいはしてみようかなって」
そう言いながらカヨコは私の頭を撫で続けている。
優し気な表情に見惚れちゃいそう。
「……はい、おしまい」
「え~、もっと~」
「仕事中でしょ」
そういえばそうだ。
カヨコの接客するのが仕事だからこのままでもいいんだけど。
「わかりましたー、食器下げますね。あ、この後イベントがあるから参加してね」
「……イベント?」
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