私の呟きが聞こえたのか、彼女は振り返った。
違う、ユメ先輩じゃない。
じゃないけど……私の知っている人だ。
彼女は納得したようで、すぐに視線を戻し歩いていく。
声をかけようとしたが、言葉が出ない。
───ホシノ、どうして貴女はユメ先輩のような見た目にしているの。
聞きたかった。
でも、聞いてはいけなかった。
態度に出さなかっただけで、ホシノはユメ先輩の事を引きずっているのではないか。
当たり前じゃないか。
ホシノはユメ先輩相手には心を許していた。
同年代の私よりも先輩との方が仲良くしていたと思う。
恥ずかしそうな顔をしていたが、ユメ先輩とのツーショットも撮っていた事もある。
私はホシノを超人か何かと勘違いしていたのかもしれない。
彼女も心がある人間だというのに。
ホシノがユメ先輩の死体を見つけた時の顔は、今でも鮮明に思い出せるのに。
どうして私はあの時、少しでもホシノの為に頑張ろうと思えなかったのか。
ホシノなら大丈夫、そこで思考停止していた。
私はどこまで身勝手なのか。
自分の身が可愛いから逃げたのに、かつての同級生の姿を見て、現状も知らないくせに勝手に憐れむなど。
そんな事を考えるくらいなら、最初から逃げるべきじゃなかったんだ。
ホシノの実力はヒナも知っていたからか、アビドスとの戦いは中断された。
行政官の勝手な振る舞いをヒナが代表して謝罪し、風紀委員会は撤退する。
私は逃げるようにその場を去った。
雰囲気が変わったホシノも気になるが、私が今更出ていくなんて出来ない。
私はホシノやアビドスを見捨てたのだから。
それから少し経った頃。
私のモモトークにヒナからメッセージが届いた。
『シャーレの先生から協力要請があったわ』
続きの内容は私にとって信じ難い物だった。
ホシノは黒服という大人に従って、アビドスから去ろうとしていると。
『小鳥遊ホシノを助ける為、貴女も戦える?』
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