その後、学園まで戻ってホシノと軽く会話したのは覚えているが、それ以降の記憶がない。
気が付いたら家のベッドに腰掛けていた。
多分ホシノが気を利かせて、少し休むよう言ってくれたんだと思う。
私はベッドに横になる。
溜まっている疲れを取る為に目を瞑った。
しかし、あの光景が脳裏に焼き付いている。
普段は優しくおっとりした彼女が、ただの物言わぬ肉塊になっている姿が。
ホシノのあの辛そうな顔が。
頭にこびりついて離れない。
「……うぷっ……」
口を押さえ、トイレに駆け込む。
胃から逆流した物を便器に全て吐き出して、吐き気が収まった。
「うっ、うう……ううぅうう……!」
ようやく吐き気が収まったと思ったら、今度は涙が止まらなくなった。
怖い。怖い。怖い。
私はなんとなく楽観的だった。
アビドスの借金もいつか返して、復興出来る日が来るんだと考えていた。
ユメ先輩がいたから。
あの太陽のような人がいるからこそ、私は希望を持ち続けられたんだ。
でも、もう彼女はいない。
彼女の死で、私の希望は絶望へと反転する。
───このままアビドスにいたら、私もいつか───
最悪の未来を想像する。
自分がユメ先輩のように死ぬ未来を。
ああ、本当に最悪だ。
私はあれだけお世話になったユメ先輩の意思を継ごうともせず、自分の事ばかり考えている。
まだホシノもいるのに、自分だけ助かろうとしている。
本当に、最低だ。
でも私は……私には、命を賭ける程の覚悟はない。
学園復興よりも、命の方が大切なんだ。
ユメ先輩や、ホシノのようには振る舞えない。
私には何の取り柄も、ないのだから。
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