「夢物語もいい加減にしてください!」
その日の事はよく覚えている。
いつものようにユメ先輩がトラブルに巻き込まれ、ホシノが助けた。
だいたいホシノがやっつけたが、私も多少は協力した。
ユメ先輩がトラブルに遭うのはいつもの事だし、そこまではよかったのだが。
「その肩に載った責任を、少しは自覚したらどうですか!」
だが、その日はいつもと違った。
ホシノの苛立った声に、ポスターの破ける音。
横で見ていた私は声が出せなかった。
ホシノを叱るでも、ユメ先輩を慰める言葉も出て来ない。
もしかしたら、私も薄々思っていたのかもしれない。
こんな事を続けていても意味なんてないのだと。
ホシノは生徒会室から出ていく。
私は落ち込んでいるユメ先輩に声をかけようとした。
「私は大丈夫だから、ホシノちゃんの傍にいてあげて」
しかし遮られた。
私が言葉に詰まっていると、ユメ先輩はいつもの笑顔を見せる。
「お願いだよ、カタリちゃん」
その笑顔に少し安心した私は頷いた。
校舎の外に行き、ホシノを追いかける。
ホシノは市街地で佇んでいた。
私は近くの自販機でジュースを買い、ホシノに渡す。
「……すみません、頭冷やしました」
私が声をかけた頃にはホシノも冷静になっていた。
私も自分の分の飲み物を買い、ホシノの隣に移動する。
「後でユメ先輩に謝らないとね」
「……はい」
ホシノだけではなく、仲裁出来なかった私も謝ろう。
それで仲直りだ。
いつもの生徒会に元通り。
────しかし、ユメ先輩はその後生徒会室に帰ってくる事はなかった。
→