(その日の夜、イザナはバイクを走らせて出かけて行った)
(「ちょっとチーム潰してくる」。普段なら気にならないはずの言葉が、その日に限ってどうにも頭に引っかかる。妙な胸騒ぎに、あなたはフルフェイスを手に取り自分のバイクに跨った。──子供の頃のイザナが真一郎に乗せてもらったと珍しくはしゃいでいたので、そんなに喜ぶなら自分も乗せてやろうと頑張って免許を取ったのだ)
(今ではすっかり乗り慣れた愛機を走らせて、イザナが呟いていた場所へと向かう。ただの気のせいならそれでいい。しかし何度も人生をやり直し、ようやくここまで来たのだ。やらない後悔だけはしたくなかった)
(──晒された首元に当たる風が冷たい。そろそろ2月が終わろうとしている)
(目的地に近付くにつれ、路駐しているバイクが目立ってきた。その中にはすっかり見慣れたイザナと鶴蝶の物もある。見張り要因として立たされているのだろう、赤い特攻服を着た青年にフルフェイスを脱いで声をかければ、やはり抗争中なのだと言う。その相手が東京卍會だと聞いて目を剥いた。──その名前は、万次郎が率いるチームだったはずだ。すぐ先で喧嘩していると教えてもらい、あなたは再びバイクを走らせながらも思考する)
(イザナは万次郎が真一郎の弟であることを知っている。……とてつもなく、嫌な予感がする)
(どうかこの予感が外れるように祈りながら、あなたはようやくその場所にたどり着く)

(そして目に飛び込んできた光景に────バイクから手を離し、あなたは力の限り駆けた)
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