名前:佐野万次郎

マイキーの頭を181回なでなでした

もふもふ

(───それからあなたの人生は変わった)


(まず、二人に関わることをやめた。あなたは自分の時間を満喫するようになった)

(適当に仕事を探し、適当に空腹を満たし、適当に友人関係を作り、適当に一日を終える。まるで"前の世界"をなぞるかのように、あなたは生きることにした。案外その生活は合っていて、あなたはゆっくりと万次郎たちの居ない世界に順応していった)


(時折すれ違うランドセル姿の少年から目を逸らし、前を向いて歩く。彼が楽しそうに隣にいる兄の名前を呼ぶ。……その声であなたの名前を呼ぶことは、きっともうないだろう。でも、それでいいと思った)

(見知った児童養護施設を通り過ぎる。その窓の奥で、人形のような少年がぼんやりと頬杖をついて過ごしている。……その綺麗な瞳があなたを映すことは、きっともうないだろう。でも、それが正しい道なのだと思った)


(そうして二人と関わらないようにすると決めてからちょうど1年後、あなたはトラックに轢かれて死んだ)



(誰かの人生を背負う重さに比べれば自分一人が死ぬことなどちっぽけな事だと、あなたは笑ってすべてを受け入れた)

(──この先タイムリープしたところで、必ず1年後に轢かれて死ぬことになったとしても。何度も何度も何度も、時を繰り返しても。──あの二人に泣かれて終わる人生よりは、ずっといい。そう思って、あなたは何度目かも分からない、自分の命が潰れる音を聞いた)