名前:佐野万次郎

マイキーの頭を181回なでなでした

もふもふ

(─────)


(─────………)



(──それからあなたは、何度も"この世界"を繰り返した)

(もう回数は覚えていない。けれども死因のほとんどはイザナで、万次郎との接触がトリガーだった。何の因果か、偶然万次郎と出会い立ち話しているところを見られ、時には死ぬまで殴られ、持っていたナイフで刺され、高いところから突き落とされた。その度に泣くイザナの顔を見て、あぁまたか、と思いながら、再び世界が暗転する)

(あなたは二人を諦めたくなかった。万次郎だけではなく、イザナのことも救いたかった。家族のいる万次郎とは違い、イザナは天涯孤独の身だ。それでも彼には血が繋がらずとも心配してくれる兄がいた。それを受け入れてほしかった)




─────!!!!


(──降りしきる雨の中、イザナが真一郎に向かって泣きながら何かを叫んでいる。そうして背を向けて逃げ出す)

(──"また"だ。同じことの繰り返し。何度も見た光景に、ぐらぐらと視界が揺れた)


(何が足りない。イザナを救うために、何が───)








アンタもどうせ、シンイチローと同じなんだろ!!


(ドン、と胸に走る衝撃に、あなたは思わず心の中で笑った。目の前には声高に裏切り者と泣き叫んでいるイザナが、その手に血で濡れたナイフを構えていた)

(急激に体中の力が抜けていき、抵抗する間もなく地面へ座り込む。痛みにはもう慣れた。……けれども、目の前にいる可愛い弟の泣き顔だけは、どうしても慣れることが出来ない)


オレより、マンジローの方が……っ!!


(……今回もきっと、死ぬのだろう。視界が霞みぼやけていく。泣きじゃくるイザナが遠くなっていく)

(だからこそ、あなたはイザナに手を伸ばして、掠れる声でその名前を呼んだ。呼ばなければいけなかった。──次こそは助けてみせる。そう思わないと、あなたがあなたで無くなる気がした)

(あなたはイザナを、万次郎を、救わなければいけないのだ)






(────本当に?)