(─────)
(─────………)
(──それからあなたは、何度も"この世界"を繰り返した)
(もう回数は覚えていない。けれども死因のほとんどはイザナで、万次郎との接触がトリガーだった。何の因果か、偶然万次郎と出会い立ち話しているところを見られ、時には死ぬまで殴られ、持っていたナイフで刺され、高いところから突き落とされた。その度に泣くイザナの顔を見て、あぁまたか、と思いながら、再び世界が暗転する)
(あなたは二人を諦めたくなかった。万次郎だけではなく、イザナのことも救いたかった。家族のいる万次郎とは違い、イザナは天涯孤独の身だ。それでも彼には血が繋がらずとも心配してくれる兄がいた。それを受け入れてほしかった)

─────!!!!
(──降りしきる雨の中、イザナが真一郎に向かって泣きながら何かを叫んでいる。そうして背を向けて逃げ出す)
(──"また"だ。同じことの繰り返し。何度も見た光景に、ぐらぐらと視界が揺れた)
(何が足りない。イザナを救うために、何が───)

アンタもどうせ、シンイチローと同じなんだろ!!
(ドン、と胸に走る衝撃に、あなたは思わず心の中で笑った。目の前には声高に裏切り者と泣き叫んでいるイザナが、その手に血で濡れたナイフを構えていた)
(急激に体中の力が抜けていき、抵抗する間もなく地面へ座り込む。痛みにはもう慣れた。……けれども、目の前にいる可愛い弟の泣き顔だけは、どうしても慣れることが出来ない)
オレより、マンジローの方が……っ!!
(……今回もきっと、死ぬのだろう。視界が霞みぼやけていく。泣きじゃくるイザナが遠くなっていく)
(だからこそ、あなたはイザナに手を伸ばして、掠れる声でその名前を呼んだ。呼ばなければいけなかった。──次こそは助けてみせる。そう思わないと、あなたがあなたで無くなる気がした)
(あなたはイザナを、万次郎を、救わなければいけないのだ)
(────本当に?)
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